2002 Fiscal Year Annual Research Report
氷河・氷床コアにおける固体直流電気伝導度を用いた年代決定と古気候・古環境の解明
Project/Area Number |
01J02587
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
戸山 陽子 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 南極 / 氷河・氷床 / 雪氷コア解析 / 年代決定 / 固体直流電気伝導度 / 古気候・古環境 / 化学分析 |
Research Abstract |
過去、数百年における気候・環境因子の年々変動を南極氷床で掘削された浅層コアから求め、産業革命以降の人間活動の影響を地球規模影で評価することが本研究の目的である。本研究に用いた浅層コアは、南極・東ドローニング・モードランド域の昭和基地とドームふじを結ぶルート上で、表面質量収支や積雪堆積課程の異なる場所S25、H15、H72、YM85、H231、MD364、DFS地点で掘削されたコアである。本年度の研究活動は、これらのコアの年代を決定する作業を行った。具体的な活動内容はH231とMD364コアの酸素同位体の測定と主要イオン種の測定(イオンクロマトグラフ)を行った。また、日本南極地域観測第42次隊によって掘削されたYM85地点で掘削された雪氷コアの基本解析を行った。 MD364地点で掘削された雪氷コアの研究結果は、ECM(固体直流電気伝導度)と化学主成分(nssSO_4^<2->とpH、MSA)を統計的に解析を行い、6つの有意な火山シグナルが推定できた。これらの結果はMD364コアの年代を推定する上で重要な役割を果たす。火山シグナル年代よりもモデル年代の方が古く出ており、堆積中断の影響やMD364地点付近の表面流動の影響が現れていることが考えられる。H231地点で掘削された雪氷コアに関しては、ECMと化学主成分の結果より、過去200年間のうち最大規模の噴火記録をもつ1815年に噴火したTambora火山シグナルを検知することが出来た。 また、雪氷コアの基本解析のひとつであるECM測定を行う際の問題点のひとつに、氷の密度変化に伴うECMのバックグラウンド値の変化がある。同じ水素イオン濃度の部分でも、雪氷コアの密度が小さいとECMのバックグラウンド値は小さくなる。そこで、本研究ではECMの密度補正を行う経験式を求めることを目的とする実験を行った。その結果、雪氷コアの密度変化に伴うECM値のバックグラウンド変化の原因は、ECM値が氷の層位構造に対して依存性があることを定量的に明らかにし、ECM値と氷の層位構造の関係を求め、経験式を求めることが出来た。この経験式はECM値の密度補正を行う際に使用することが出来る。これらの結果は、多点地域で掘削された雪氷コアから火山活動に起因するECMシグナルを比較する場合に役立つことが期待される。
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