2002 Fiscal Year Annual Research Report
遷移放射X線の偏光特性ならびに競合放射過程との干渉効果の解明とその応用
Project/Area Number |
01J02670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢島 千秋 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遷移放射 / X線 / パラメトリックX線 / 偏光 / 動力学的回折 |
Research Abstract |
1.ナローピーク遷移放射の競合放射過程である前方パラメトリックX線放射について計算シミュレーションを行った結果、薪たに次の知見が得られた。ただし、1GeV電子ビームをSi(220)結晶へ通過させ、放出光子はσ偏光状態と想定した計算例による。 (1)エネルギースペクトルはブラッグエネルギーを中心としたシングルピーク様となった。ピーク幅は、反射結晶面と電子ビームのなす角をφとして、φ=18°で32eV、φ=25°で16eV、φ=45°で10eVとなり、ピーク幅が数eV〜数十eVとなることが判った。 (2)電子ビーム軸を原点とし、電子ビーム方向と反射結晶面の逆格子ベクトルで張られる面に垂直な方向と平行な方向を表す角度パラメーターで表記すると、放射角分布は垂直方向には原点で谷となる原点対称の波状分布をもち、その形状は光子エネルギーに依存するものとなった。平行方向の分布の幅は極小さく、位置だけが光子エネルギーに対応して変化した。垂直方向の分布は10mrad程度の広がりをもっていた。 (3)ピーク強度は〜10^<-10>photons/e^-/eVとなったが、これは同条件でのナローピーク遷移放射と比べて2桁程度小さい。 2.詳細な計算研究によりナローピーク遷移放射および前方パラメトリックX線放射の興味深い特性が明らかになってきたが、逆にその結果から、その極小さいエネルギー幅、強度のX線シグナルを、同時に放射される制動放射、通常の遷移放射等の大放射場中で検出することは、現時点で構築可能なX線検出方法では事実上困難であると考え、研究指導者とも相談の上、本年度中から研究方法を計算シミュレーション主体へと移行した。ただし、これは今後のナローピーク遷移放射実験の可能性自体を否定することではない。来年度も、競合放射の干渉効果や偏光特性等に関し、計算による研究を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] K.Yajima: "Calculation of Narrow Peak Transition Radiation Generated from a Thin Crystal Target"Annual Report of Quantum Science and Engineering Center. Volume 4. 18-20 (2002)
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[Publications] 矢島千秋: "結晶薄膜から発生するナローピーク遷移放射の計算"量子理工学研究実験センター第3回公開シンポジウム 講演要旨集. 94-95 (2002)
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[Publications] Kazuaki YAJIMA: "Calculation of Narrow Peak Transition Radiation X rays and Forward Parametric X-ray Radiation Generated by Dynamical Diffraction Effect"JAERI-Conf Proceedings of the 4th Symposium on Advanced Photon Research. (発売予定).