2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J02745
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中井 淳史 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世 / 土師器 / 手工業 / 歴史考古学 |
Research Abstract |
本年度は陶磁器・木漆器などほかの手工業生産の動向を検討しながら、土師器生産の特質を考察することを課題とした。土師器に関しては、模倣生産を手がかりに15〜16世紀の状況を整理し、消費者の意向を反映しつつどのように展開したかを検討した。ほかの手工業生産については、鉄器、木漆器などの研究状況の把握をすすめたものの、じゅうぶんに比較対照するまでには至らなかった。ただし、土師器生産については一応の整理ができたことで(論文にて公表)、検討の見通しがたつ段階には到達した。 土師器生産集団を抽出する研究の一環として、宇治市域の中世資料を集成し、出土資料の変遷を検討した。宇治市域は平安京に隣接する地理的環境から、これまでは京都産土師器の編年をそのまま適用して年代を決定してきた。しかしながら、近年の研究成果は京都産土師器の供給圏が現在の京都市にほぼ限定されていたことを明らかにしている。この動向をふまえ、近畿地方で多く出土し、編年も安定している瓦器椀との共伴関係を手がかりに、宇治市域出土資料の編年研究をおこなった。11〜16世紀の変遷を明らかにし、京都産土師器の編年とのズレを指摘した。京都産土師器にあらわれる型式学的特徴のほとんどは、ほぼ同時期に宇治市域の土師器生産にも受容されたが、その存続期間には大きな時間的ズレがあった。資料の制約もあって、生産集団の抽出については予察の提示にとどまったが、京都産土師器の生産地に隣接した地域が独自の動きをみせていたことが明らかになり、生産の持質を考える重要な材料が得られた。なお、この成果は報告書付載の論文にまとめた。 考古学の解釈理論に関する検討は、研究計画の遂行のなかで派生し、昨年度から継続してきた課題である。本年度は歴史考古学の学史を整理を通じて、現在の視点や方法論の形成過程を検討した。これは中間報告として口頭発表をおこなった。
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Research Products
(2 results)