2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本の技術革新における補完的ネットワーク-その過去と現代-
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01J02807
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徳丸 宜穂 京都大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | イノベーション分業 / 知識のコード化 / 半導体産業 / イノベーションシステム / 技術市場 / 生産性運動 |
Research Abstract |
本年度は,次のような方向で研究を行った。 (1)情報技術の援用や,科学的知見の蓄積によって,技術的知識が次第に「暗黙知」的なものから,明文化(コード化)されたものへと変換されてきている。しかし,このような変化が,技術革新の組織的・制度的形態にどのような影響をもたらすかは明らかにされていない。また反対に,ある組織的・制度的形態がコード化と親和性を持っているのかどうかという問題も同時に解明される必要がある。このことは,いわゆる日本型企業システムの現代的意味を考える上で重要である。このような問題意識に基づいて,技術的知識の変容と技術革新組織の相互作用の論理を探るべく,聞き取り調査を行った。その結果,通説的な理解とは異なり,「コード化」が進展しても,技術革新組織が脱統合化(「イノベーション分業」)されるとは言えないこと,また,「コード化」は技術的問題解決の次元を高次化するということを明らかにした。これらは確かに,従来の日本型企業システムと齟齬をきたすことになるが,反面,いわゆるアメリカ型企業システムとは区別された進化経路を辿りうるということを示している。これに関しては論文を執筆し,欧州進化的政治経済学会で報告した。また,3月にはリヨン大学で本論文を主要内容とする研究報告をした。本論文は英文雑誌に投稿中である。 (2)上で述べた日本型企業システムの歴史的形成を明らかにするため,戦後「生産性運動」の展開に関する共同研究を行った(継続中)。2003年前半には『戦後日本経済と生産性運動』(塩沢由典編)として出版される。同書所収の拙稿では,生産性運動の展開に関する概観を行った。能率向上運動は戦前から行われ,また戦後にはそれら諸団体が活動を継続して行っていた。このような状況において、昭和30年に発足した日本生産性本部による生産性運動はどのような歴史的・文脈的固有性を持ったのだろうか。また,生産性運動を要求した現実的・文脈的条件はどのようなものだったのであろうか。戦時生産の隘路,その帰結としての戦後インフレーション,解決策として提示された「ドッジ・ライン」,各企業における対応としての技術導入,という4つの契機を基軸として,以上の問題に対する解明を行った。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Norio TOKUMARU: "The division of labor is limited by the extent of the market? The counter-case of the Okayama farm-engine industry in Japan"Industry and Innovation. Vol.10(号未定). (2003)
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[Publications] 徳丸 宜穂: "米国半導体産業における技術開発様式の階層性とその進化:技術特化型技術開発と多技術型技術開発"国民経済雑誌. 第187巻第2号. 1-16 (2003)
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[Publications] 徳丸 宜穂: "戦後日本の生産性向上運動:その背景と展開"塩沢由典編『戦後日本経済と生産性運動』(生産性出版)*図書. (2003)
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[Publications] Norio TOKUMARU: "Codification of technological knowledge, technological complexity, and division of innovative labour : A case from the semiconductor industry in the 1990s"European Association for Evolutionary Political Economy Proceedings 2002 (学芸予稿集CD-ROM). (2002)