2002 Fiscal Year Annual Research Report
Lie環の普遍包絡環の研究とdual pair理論
Project/Area Number |
01J02834
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 稔 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | dual pair / 普遍包絡環 / Capelli恒等式 |
Research Abstract |
不変式論の重要な道具であるCapelli恒等式についてその類似をdual pairの観点から構成した。 Capelli恒等式はWeyl代数の等式であり,表現論的には普遍包絡環の中心と不変作用素の空間のある自然な対応を生成元レベルで記述する等式と見なせる。これと同様の等式がClifford代数でも成立する。このNazarovによる等式もやはり普遍包絡環の中心と不変作用素の空間との対応を生成元のレベルで記述する。 ここで記述の対象になっている普遍包絡環の中心と不変作用素の空間との対応は,より一般に複素symplectic群Sp_k,複素直交群O_kにおけるreductive dual pairとそのoscillator表現,spin表現に成立する。 今年度はこのようなdual pairの枠組みでCapelli恒等式の類似を構成した。具体的には上記のCapelliとNazarovの結果,つまり(GL_r, GL_s)⊂Sp_<2rs>と(GL_r, GL_s)⊂O_<2rs>というdual pairの場合に加えて, (O_M, Sp_N)⊂Sp_<MN>と(O_M, O_N), (Sp_M, Sp_N)⊂O_<MN>というdual pairの場合に普遍包絡環の中心と不変作用素の空間とを結び付けるCapelli型の等式を与えた。これでSp_k, O_kにおける既約なreductive dual pairに関してCapelli型の等式が揃ったことになる。 従来はSp_kにおけるdual pairが主な研究対象だったが,O_kにおけるdual pairも視野に入れることで,Capelli elementのような行列式で表される普遍包絡環の中心元だけでなくpermanentで表される中心元が自然に現れてくる。この新しい中心元を通じてSp_kにおけるdual pairの等式にも新しい側面が観察された。また今回の結果を応用してこれらの中心元の固有値の計算もできた。さらに行列式,permanentによる2系列の中心元の母函数が互いに逆数になることもわかった。
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