2002 Fiscal Year Annual Research Report
視覚系の計算理論と自己組織化原理に関する神経回路モデル
Project/Area Number |
01J03140
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土肥 英三郎 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 第一次視覚皮質 / 色 / 計算理論 / 冗長度削減原理 / 独立成分分析 / 過完備表現 / 受容野 / 神経回路モデル |
Research Abstract |
昨年度までの我々の研究で,視覚処理の初期段階における空間分光特性が段階的な冗長度削減によって説明できることが示唆された.しかし,視覚処理の第二段階に相当する外側膝状体(LGN)から第一次視覚皮質(V1)における表現変換に関しては,実験データとの相違があることも明らかになっていた.電気生理学実験によると,赤-緑軸に沿って色変調させた視覚刺激に応答する細胞は黄-青軸に応答する細胞よりも約7倍程度多いことが明らかにされている.我々のモデルではむしろ赤-緑軸に応答する細胞の方が少なかった.また,LGNからV1にかけてはニューロンの数が増加することが知られているが,我々のモデルではその比を1と仮定していた.これらの相違を解決するため,我々はV1とLGNの細胞の比を2とする条件下で冗長度削減プロセスを求め,その特性を詳細に分析した.その結果,赤-緑情報を表現すると考えられる細胞(R/Gユニット)が従来のモデルに比べて増加し,更に色に関係なく明暗コントラストを表現する細胞(Achromaticユニット)が赤-緑変調に対して強く応答することが明らかになった.また,R/Gユニットが方位選択的な二重反対色型受容野を持つのに対し,赤-緑に強く応答するAchromaticユニットは,白色刺激に対してはガボール関数で近似されるような単純型細胞の受容野を,赤-緑刺激に対しては同心円状の重反対色型受容野を示すことが明らかになった.同心円状の重反対色型受容野がモデルによって再現されたのは本研究が初めてである.更に我々のモデルは色に選択的に応答する細胞の頻度が少ないにも関らず,輝度変調よりも色変調のに対して視覚系が強く応答するという,一見矛盾する心理物理学データと神経心理学的データ(それぞれ検出閾とfMRI信号に基づく)を再現できることも明らかになった.これらの結果は,冗長度削減の初期視覚系の組織化原理としての妥当性を強く示すものとなっている. なお,本研究は平成14年4月1日から同年9月28日の間カリフォルニア大学サンディエゴ校神経計算研究所(Institute for Neural Computation, University of California, San Diego)にて行われた.
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] Doi E, Inui T, Lee TW, Wachtler T, Sejnowski TJ.: "Spatiochromatic receptive field properties derived from information-theoretic analyses of cone mosaic responses to natural scenes"Neural Computation. 15(2). 397-417 (2003)