2002 Fiscal Year Annual Research Report
高分子鎖の相転移由来の非線形特性に基づき動作する分子機械モデルの研究
Project/Area Number |
01J03257
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野村 慎一郎 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子機械の実動モデル / 光ピンセット / 非平衡開放系 / 細胞サイズリポソーム / 単一分子観察 / DNA転写反応 / ガングリオシド / ネットワーク構造 |
Research Abstract |
本研究課題が目的に掲げたのは,分子機械の実動モデルを現実の実験系で作り出し,分子機械の一般動作原理を示す理論を構築することである.これまでに,分子機械の駆動エネルギーとして熱を用いる系として,赤外線を用いた光ピンセットによって焦点に捕捉されたμmスケールの物体が,溶媒の光吸収により局所加熱され物体のスケールと同程度の領域で温度勾配に晒されるという熱力学的非平衡開放条件を与える実験系を構築した.この系では単一分子鎖レベルで折りたたみ・解きほぐしの高次構造転移を起こすDNA単一分子および脂質膜チューブ構造を用いて,各々の温度応答性に起因したリズム現象を見出した.また,この焦点近傍のエネルギー散逸場においてサブμmスケールのビーズの間欠的な集合離散現象を確認し報告した.これらの系を発展させ,実際に生物が行っている等温系の溶液環境での分子機械駆動モデル構築のために,荷電高分子を封入した細胞サイズの巨大リポソーム内外の化学ポテンシャル差をコントロールして,荷電高分子の振る舞いを調べるための実験を行ってきた.細胞サイズのリポソームが浸透圧の効果によって自発的に形成される方法を確立し,その際に,溶液中のDNA等の荷電高分子を内部に取り込むことをDNA単一分子の実時間観察の結果から明らかにした.さらにリポソーム内部において細胞が用いる生化学反応の代表例である転写・発現系を実現し,そのRNAへの転写反応の単一分子レベルでの観察から,膜が反応系を破壊的な高分子環境(RNase)から保護しうることを示した.また,反応場の自発的な制御への試みとして,荷電糖鎖を親水性頭部に持つ脂質分子(ガングリオシド)の添加により,リポソームの多重連結系(ネットワーク構造)が自発的かつ速やかに形成されることを明らかにした. 以上本研究を通じて,荷電高分子による生化学反応系を封入した細胞サイズリポソームを用いて反応の進行により場そのものに自発的かつ質的な変化を生じさせるモデルを構築する上での基礎的かつ重要な知見が得られた.
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[Publications] N.Magome, H.Kitahata, M.Ichikawa, S.-i.M.Nomura, K.Yoshikawa: "Rhythmic bursting in a cluster of microbeads driven by a continuous-wave laser beam"RHYSICAL REVIEW E. Volume 65. 045202 1-045202 4 (2002)
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[Publications] S.-i.M.Nomura, H.Mayama, K.Yoshikawa: "Nonlinear dynamics in a laser field : Spontaneous oscillation of mesoscopic soft-matter"Chaos, Solitons & Fractals. Volume 17 Issues 2-3. 419-423 (2003)
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[Publications] K.Akiyoshi, A.Itaya, S.-i.M.Nomura, N.Ono, K.Yoshikawa: "Induction of neuron-like tubes and liposome networks by cooperative effect of gangliosides and phospholipids"FEBS Letters. Volume 534 Issues 1-3. 33-38 (2003)
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[Publications] 野村 M.慎一郎: "勝手に動く超分子システムを作る -より生物らしさを目指して-"生物物理. 247(未定). (2003)