2002 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖生態系の変動の鍵を握る大型植物プランクトンに関する研究
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01J03298
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鏡味 麻衣子 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植物プランクトン / 季節遷移 / 寄主-寄生関係 / 被食-補食関係 / 琵琶湖 / ツボカビ |
Research Abstract |
琵琶湖北湖では、かつての植物プランクトンの明瞭な季節変動パターンは崩れ、Staurastrumなどの大型の緑藻類が卓越的に出現している。本研究では、卓越している大型緑藻から始まる食物連鎖について検討し、大型緑藻の卓越が琵琶湖の生物群集に与える影響を評価した。 培養実験の結果、大型緑藻は他の種に比べて動物プランクトンに捕食されにくいことが明らかとなった(Oecologia誌掲載)。この結果から、大型緑藻は、植物プランクトンー動物プランクトンー魚という生食連鎖には乗らないことが示唆された。一方、野外調査から、大型緑藻の死亡率と水生菌類(ツボカビ)の寄生率との間には有意な正の相関関係が得られ、大型緑藻の死亡には水生菌類(ツボカビ)が関与している事が明らかとなった(Verh. Internat. Verein. Limnol.誌掲載)。これらの結果は、大型緑藻は菌類を介して食物網に参入していることを示唆するものである。次に大型緑藻が菌類の寄生を通じてどのように食物網に参入しているのかを具体的に明らかにするためには、菌類が食物網のどこに組み込まれるかについて検討する必要がある。 これまで湖沼の水生菌類についての研究はほとんどなされておらず、知見はきわめて少ない。また、水生菌類の計数、同定・単離培養方法も確立されていない。そこで、植物プランクトンに寄生する菌類(ツボカビ)の専門家のいるオランダの研究室に4月より渡航し、研究に最低限必要な水生菌類の単離培養と計数法の確立を試みた。方法の確立は7月に成功し、その成果をふまえ室内実験を行った。実験の結果、水生菌類は動物プランクトンに捕食されることが明らかとなり、大型緑藻-菌類-動物プランクトンという食物連鎖の存在が強く示唆された。今後は、今回発見した新しい食物連鎖の構造について、より詳細に解析する予定である。
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[Publications] Maiko Kagami: "Direct and indirect effects of Zooplankton on algal composition in in-situ grazing experiments"Oecologia. 133巻. 356-363 (2002)
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[Publications] Maiko Kagami: "Mortality of the planktonic desmid, Staurastrum dorsidentiferum, due to interplay of fungal parasitism and low light conditions"Verh. Internat. Verein. Limnol.. 28. 1001-1005 (2003)