2002 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯林における一斉開花の究極要因の解明〜捕食者飽食仮説の検証〜
Project/Area Number |
01J03332
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 弥智子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フタバガキ科 / 種子食昆虫 / 種子特性 / 一斉開花 / 選好性 / サラワク |
Research Abstract |
今年度は以下の研究を行った。 1.フタバガキ科種子捕食者の継続調査 2001年8月から2002年4月にかけて起こった一斉開花由来のフタバガキ科種子を採集・飼育した結果、まだ最終的な同定が終了していないが、今年度はキクイムシ科がフタバガキ科種子食昆虫の中で最も多くを占めることが分かった。 2.フタバガキ科種子の物理・化学的特性と種子食昆虫の選好性 フタバガキ種子は種によって様々な物理的・化学的特性を持ち、その中で、高濃度のリグニン、縮合タンニン、総フェノールや窒素をもつ特殊なDipterocarpus palembanicusの種子は、特異的な種子食昆虫相を持つことが分かった。また、キクイムシはリグニン、総フェノールや窒素の多い種子を、小型のガはデンプンの少ない種子をそれぞれ好む一方、ゾウムシには明瞭な嗜好性は認められず、種やグループによって異なる選好性を示した。これにより、フタバガキ種子は物理的・化学的防衛のみでは様々な昆虫による捕食を効率的に回避できないでいることが明らかとなった。この成果は、現在投稿論文にまとめている最中である。 3.一斉開花の規模と種子の虫害率 虫害を受けた種子の割合は、種によって多少ばらつきがあるものの、フタバガキ12種全体でみると一斉開花規模の小さい年(1998年)より大きい年(2001年)に有意に低く、種間結実同調による散布前種子食昆虫の飽食効果が認められた。また一斉開花の進化的要因として、散布前段階における捕食者飽和仮説の可能性を示唆した。
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