2002 Fiscal Year Annual Research Report
H.シジウィックの経済・財政思想と現代財政システムへの示唆
Project/Area Number |
01J03544
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菊地 裕幸 京都大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | シジウィック / ピグー / 効率 / 公正 / 経済学のアート / 事業税制のゆがみ / 集積の利益・不利益 / 外部負経済 |
Research Abstract |
1.税制改革における効率と公正-H.シジウィックとA.C.ピグーの財政思想- 本稿では、シジウィックとピグーの財政思想がどのようなものであり、両者の共通点および差異は何かを明らかにした。その際、本稿では次の二点に着目した。第一に、シジウィツクは、「経済学のアート」という概念を提起し、経済学における倫理や規範の重要性を明確に指摘した。ところがピグーは、シジウィックから大きな影響を受けているにもかかわらず「アート」の概念を受け入れることを拒否し、経済学を「アート」ではなく「科学(サイエンス)」として位置づけたのである。それはなぜか。また、ピグーは、規範や倫理についてどう考えていたのか。この問題を探った。第二に、シジウィックは、所得税制においては、課税最低限を設定した上での比例課税を主張し、累進課税を否定した,一方、ピグーは、シジウィックとは対照的に累進課税を積極的に支持したのである。両者にこのような違いが生じたのは一体なぜか。両者は、効率と公正の両立をどのようにして実現しようと考えていたのか。本稿では、これらの問題を解明した。 2.現代都市税制改革論より見た事業税制-石原都政と美濃部都政を事例として- シジウィックやピグーの分配の正義論あるいは租税論は、現代においてどのような意義を持ち得るかについて検討すべく、日本の事業税制を取り上げ、その先駆的な改革を行った東京都の美濃部都政と石原都政の改革について考察した。 現代における都市税制改革は、一方では、深刻化しつつある地球環境問題や地域環境問題に配慮し、他方では、個人の生存権と自由権を保障しうる福祉の実現に目を向けざるを得ない。美渡部都政と新財源構想研究会の改革は、単に財源を調達するだけでなく、集積の利益・不利益問題や、公害・混雑現象などの外部負経済問題、さらには負担の不公平問題などを解明し、それらの抜本的解決を企図したという意味において、30年経った今でも、否、環境問題や「生活の質」が重視されつつある現代だからこそ、大いに意義を持つものであるということを、本稿では明らかにした。
|
Research Products
(2 results)