2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J03567
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山脇 博紀 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 重症心身障害児 / 居方 / コミュニケーション特性 / 生活展開 / 入居者交流 / 共用空間 / 自己領域の形成 / 人的環境 |
Research Abstract |
本年度の研究において、大規模入居施設を対象に入居者行動観察と職員追跡調査を各2度行い、まず大規模生活を行う施設内において入居者がどのような人間的な関係性の中で生活を行っているか、入居者との関係性、職員との関係性を居方という視点を導入することによって考察し、空間などの物理的環境との関係性について以下の知見を得た。 1.他者との交流頻度、交流対象は居室・食堂ホール・その他の共用空間において明確に差異が認められ、このことから入居者は公共性としての「他者との交流」をコントロールするために施設内空間を使い分けている実態が把握できた。 2.コミュニケーション特性によって共用空間での他者との居方に差異が認められる。すなわち、コミュニケーション能力の低い入居者は、共用空間において他者同士が交流している場に交流無しで共存し、他者の影響を一方的に受けながら過ごしている。 3.交流の密度分布の偏りを矯正する役割を職員が担っている場面は認められる。その役割を補完し増強するために、キチネットなどの物理的環境設定が有効であることが知見として得られる一方で、廊下のベンチなどは影響が小さいことがわかった。すなわち、入居者に具体的な行動を促す物理的環境設定が、入居者の生活の質の向上に有効であることが示唆された。 次に、小規模生活への移行を計画している障害児施設を対象に持ち物調査、入居者行動観察と職員追跡調査を各2度行い、退所後のグループホーム生活を視野に入れた「生活力向上のためのリハビリテーション」のための生活環境について以下の知見を得た。 1.入居者行為は、食事などの生理的行為と仲間遊びなどの遊戯的行為に集中し、生活行為はほとんど見られない。 2.持ち物は少なく分散配置されていることから自己領域の形成は非常にあいまいであり、生活行為の拠点となりえる領域が認められない。一方で、個室に移行した児童は自己領域を形成したが、共用空間での滞在が激減し、限定的な対象との交流に変化した。 国内の重症心身障害児対応のグループホームはまだ見られず、本研究では大規模施設における問題点の抽出に重点を置いた。結果として、グループホームなどの小規模生活への建築的は知見を得ることができた。
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Research Products
(1 results)