2002 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の色覚を司る錐体視物質遺伝子の多様化と視覚システムの進化に関する研究
Project/Area Number |
01J03621
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 暁士 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 色覚 / 錐体視物質 / 旧世界霊長類 / 赤-緑色覚異常 / 自然淘汰 / ノックインマウス / 網膜 / 神経回路形成 |
Research Abstract |
カニクイザルを中心とした多型解析では以下の知見を得た。 1.オスカニクイザル760サンプルにおいて、赤・緑視物質の波長制御に関与するアミノ酸残基を含むエクソン3および5の多型解析を行った。塩基配列を解読した結果、インドネシア・パンガンダラン群以外に色覚異常カニクイザルは発見されなかった。またヒトで頻度の高いエクソン3の180番目の残基の多型(赤緑波長弁別域は狭くなるが、色覚異常の表現型は示さない多型)をはじめ、他の多型の頻度もカニクイザルでは低いことが分かった。 2.上記の多型も含め、それぞれの多型は群別に限局して存在する事が分かった。 今回の多型解析は波長シフトに関与するエクソンの塩基配列を直接解読するもので、遺伝子の有無をサザン解析などで判定するのみの従来の解析法と比べてより詳細に遺伝子型の判定が可能である。上記の結果は前年度の考察(カニクイザルにおいて色覚異常を含めた多型が集団遺伝学的要因(遺伝的浮動・瓶首効果・移住など)に影響を受ける)を支持する(現在論文投稿準備中)。 また、変異視物質を導入した3色性マウスの解析において以下の結果を得た。 1.3色性のヘテロメスマウスにて、野性型および導入視物質特異的なcRNAプローブを用いたin situ hybridizationを行い、それぞれの視細胞で両視物質が排他的に発現することを確認した。それぞれの視物質はX染色体不活化により、モザイク様の発現パターンを示した。 2.導入視物質を持つマウスの網膜電図を測定し、二次ニューロンである双極細胞由来のb波を確認した。この結果、導入視物質がGtを活性化して錐体視細胞以降のニューロンに電気信号を伝達することが分かった。 今後ヘテロマウスにおいて野性型と導入視物質の2色の弁別を行うか電気生理レベルおよび行動レベルで解析することが不可欠である。以後、これら2種類の波長選択的に反対色応答を取る網膜神経節細胞を探索し、波長弁別能の検証に取り組む予定である。
|
Research Products
(1 results)