2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J03670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菊地 夏野 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 売買春 / ジェンダー / セクシュアリティ / 性暴力 / 女性政策 / NGO / 基地問題 / 労働 |
Research Abstract |
2002年度は、「売買春と性暴力」をめぐって、次の3点から研究を進めた。 1、性暴力と社会的な権力構造の関係。性暴力は単独でどの領域にも普遍的に見出されるようなものではなく、それぞれの社会領域に固有の権力関係によって生じるものであることを明らかにするために、とくにキャンパス・セクシュアル・ハラスメントに絞って考察。アカデミック・ハラスメントとの関連を解明することで、キャンパス・セクハラのよりよい解決のあり方を考えた。その成果を論文として発表した。 2、売買春の社会的な位置を探るために、戦後の女性政策・福祉政策の調査に着手した。従来、売春問題は売春防止法にもとづく婦人相談所において取り扱われていたが、現在婦人相談所は主にドメスティック・ヴァイオレンスの問題に対応している。婦人相談所(現・DV防止センター)の歴史と現状を実地に調査することで、売買春の歴史的位置付けを考察する。この調査は現在進行中である。 3、英語圏における研究状況の調査。文献調査とインターネットにより、英語で発表されている研究を概観した。売買春についてアメリカでは何点か具体的な調査が行なわれている。またジェンダー・セクシュアリティ理論の最前線を追い、その可能性を検討した。その成果を論文と翻訳によって発表した。 以上3点によって、現在、売買春のおかれている位置を一定程度明らかにできた。現在国内外で、セックス・ワーカーの主体性を認める議論が出ているが、その一方で子ども買春に見られるようにセックス・ワーカーへの搾取構造は複雑化している。その状況に研究が追いついていないといわざるを得ない。今後は、売買春に関する理論的研究を活発にすると同時に、困難に直面する女性に対する社会的支援を進める政策的議論が求められる。来年度は、「資本とジェンダー・セクシュアリティ」の関係を理論的に解明する作業と、また行政による女性支援のあり方を考える作業とふたつの方向で進める予定である。
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