2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の維持およびニューロン・グリアの分化過程における6HLH因子の役割
Project/Area Number |
01J03707
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪本 昌美 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経幹細胞 / bHLH因子 |
Research Abstract |
哺乳動物の神経発生過程は、(1)神経幹細胞の増殖・維持、(2)神経幹細胞からニューロンへの分化、(3)神経幹細胞からグリア細胞への分化という3つの過程に分けることができる。これらの過程は多くの転写因子によって厳密に制御されると考えられているが、その詳細については不明の点が多い。 そこでbHLH(basic helix-loop-helix)型転写因子であるHesr1とHesr2の神経分化における影響を調べた。 まず、Hesr1とHesr2の大脳での発現をin situ hybridizationで解析すると、どちらも脳室周囲層に存在する未分化な細胞で発現していた。 次に、胎仔の脳室内にHesr1とHesr2を注入してエレクトロポレーションを行い、大脳の神経幹細胞に遺伝子を導入した。胎生13日にHesr1とHesr2を強制発現させた細胞は、脳室周囲層にとどまり、遊走した細胞やMAP2陽性のニューロンはほとんど認められず、未分化な細胞が維持された。その結果、あとの時期には浅層に分布する遅生まれな細胞が増加した。このことから、Hesr1やHesr2はニューロンへの分化を抑制し、未分化な細胞を維持することが示された。また、これより遅い時期にHesr1やHesr2を強制発現させると、神経分化が抑制され、astrogliaの生成が促進された。 以上の結果、Hesr1とHesr2は神経幹細胞の維持に重要な役割を果たしていることが示された。
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