2002 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属を用いたアレン類の新規触媒的合成法の開発とその触媒的不斉合成への拡張
Project/Area Number |
01J03710
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 寿士 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不斉合成 / アレン / 軸不斉 / 遷移金属錯体異性 / パラジウム / 均一系触媒 / フェロモン |
Research Abstract |
研究代表者等によって以前に見い出されたパラジウム-軸不斉2座ホスフィン錯体触媒による,1-置換-2-ブロモ-1,3-ブタジエンからの軸不斉光学活性アレンの合成反応において,反応条件のさらなる最適化を行った.不斉ホスフィン配位子を従来用いてきたBINAPから,より小さなbite angleを有する軸不斉2座ホスフィンであるSEGPHOSに変えることにより,1位にアルキル基を有する2-ブロモ-1,3-ブタジエンを基質とするアレンの不斉合成反応におけるエナンチオ選択性を75%eeから89%eeに向上させることに成功した.この値は我々が以前に達成した1位にアリール基を有する2-ブロモ-1,3-ブタジエンを基質とした場合のエナンチオ選択性と同等の値であり,現在までに知られている不斉遷移金属錯体触媒による軸不斉アレンの不斉合成反応のなかで最高レベルの値である. また,ユニークな光学活性アレン骨格を有する天然物として知られているインゲンマメゾウムシAcanthoscelides obtectusのオスの性フェロモンの合成中間体を,我々が開発したアレンの合成反応を用いて触媒的に不斉合成できることを見い出した.合成中間体の段階での光学純度は76%eeであり,天然物のフェロモンにおける数値(73%ee)を越えている.この合成法は,等量の光学活性化合物を必要とする光学分割の過程を経ないこと,及び合成ステップ数を大幅に短縮できる点で,既に報告されている合成法よりも実用的であり,我々の見い出したアレンの触媒的不斉合成反応の有用性を示す一例である.
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