2002 Fiscal Year Annual Research Report
SPMを用いた酸化物超伝導体の粒界における電子状態の観察
Project/Area Number |
01J03717
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 一啓 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 化学溶液堆積法 / weak link / 電流輸送特性 |
Research Abstract |
本研究においては二次元的伝導を示す超伝導体を扱うため、その粒界近傍の特性を評価するためには薄膜試料の作製が不可欠である。前年度に確立したCSD(化学溶液堆積法)を用いた作製法で得たBi2223超伝導膜について電流輸送特性の解析を目指したところ、基板として用いたAgの展性・延性のために生じるI-V特性測定段階での酸化物膜の破壊が問題となっていることが分かった。そこで、その問題を解決するための新たな方法について研究を行った。その結果、酸化物超伝導体と熱処理中に反応せず、かつ表面の凹凸の小さいMgOを基板に用いることにより、酸化物膜の配向度、体積分率を維持したまま測定時の致命的な破壊を防ぐことが可能な試料の作製に成功した。また、副産物的な結果として、前年度までは10μmオーダーであった膜厚を1μmオーダーまで下げることに成功した。二次元的伝導の解析には膜厚は薄いほうが良いため、この結果は今後の解析に有利なものである。このようにして得られた試料に対し、SPMの一つであるAFM(原子間力顕微鏡)を用いた観察を行った結果、板状結晶粒接合部分の凹凸は100nmオーダーであった。次年度には他のSPMによる局所的な粒界近傍の特性の観察を行う。 また、試料中の微視的な不均一性が試料全体の電流輸送特性に与える影響に関する研究として二次元のモデルを用いたのコンピュータを用いたシミュレーションを行い、Ag/Bi2223テープ材中のweak link(結晶粒界)の分布が特性にどのような影響を与えるかを前年度に引き続き調査した。結果として、試料中の超伝導部分の体積分率が特性に極めて大きな影響を与えることが明らかになった。また、このモデルによって実験で得られるn値のばらつきを説明できることが分かった。今後はこのモデルの薄膜材料への適用を検討する。
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Research Products
(1 results)