2003 Fiscal Year Annual Research Report
分子超薄膜の局所的電子物性評価およびデバイス開発のための走査型プローブ技術の研究
Project/Area Number |
01J03721
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福間 剛士 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非接触原子間力顕微鏡 / フタロシアニン / アルカンチオール / 自己組織化単分子膜 / 散逸エネルギー / 静電相互作用 / ナノ力学的物性 / 表面電位計測 |
Research Abstract |
非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)では、先鋭化された探針を一端に有する微細な片持ち梁(カンチレバー)を振動させ、探針-試料間相互作用力によって生じるカンチレバーの振動状態の変化を検出することで探針-試料間隔を制御する。本年度は、NC-AFM観察中に探針-試料間相互作用によって生じるカンチレベー振動エネルギーの散逸現象と試料の電気的・力学的物性との関係を詳細に調べた。さらに、その結果を基に、散逸エネルギー測定を利用することで局所電位分布測定や、力学的物性の分子スケール評価が可能であることを実験的に示した。 従来のNC-AFMを利用した表面電位計測手法は、探針-試料間に働く保存力を変調および検出することで、試料表面の電位分布を観察するものであった。しかしながら、これまでに行った散逸力測定の実験結果から、NC-AFMの散逸力に対する感度は保存力に対する感度にくらべて大きいことが明らかとなった。そこで本研究では、散逸的静電相互作用力を意図的に導入し、その大きさを変調・検出することで局所電位分布を計測する"散逸力変調法"を開発した。さらに、本手法と従来手法との比較実験を行いより、本手法を用いることにより感度が改善されることを実験的に明らかにした。 NC-AFM観察中に生じる振動エネルギーの散逸量をマッピングすることにより得られる像は散逸像とよばれ、真の原子分解能観察が可能であることがこれまでの実験により明らかになっていた。本研究では、アルカンチオール自己組織化単分子膜やフタロシアニン薄膜の散逸像観察を行うことで、初めて散逸像を分子分解能観察することに成功した。さらに、散逸像に見られるコントラストと分子薄膜の物性との関係を詳細に調べることで、散逸コントラストが分子の揺動や動きやすさといったナノ力学的物生に強く関係していることを明らかにした。この結果により、散逸力観察によって試料の力学的物性を分子スケールの分解能で評価できる可能性が示された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takeshi Fukuma: "Molecular-scale noncontact atomic force microscopy contrasts in topography and energy dissipation on c(4x2) superlattice structures of alkanethiol self-assembled monolayers"Journal of Applied Physics. 95・3. 1222-1226 (2004)
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[Publications] Takeshi Fukuma: "Non-Contact Atomic Force Microscopy Study of Copper-Phthalocyanines : Submolecular-Scale Contrasts in Topography and Energy Dissipation"Journal of Applied Physics. (2004)