2002 Fiscal Year Annual Research Report
長基線ニュートリノ振動実験におけるニュートリノ振動現象の探索及び検証
Project/Area Number |
01J03726
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 一成 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニュートリノ質量 / レプトン世代間混合 / ニュートリノ振動 |
Research Abstract |
1.K2K実験の現状報告 2001年11月のスーパーカミオカンデの光電子増倍管破損事故により、2002年1月より約6ヶ月間予定されていたKEK-PSのK2K実験のためのビームタイムはすべてキャンセルとなった。2002年3月よりスーパーカミオカンデ復旧作業を開始し、今年10月上旬には従来の約半分の密度で光電子増倍管を配置し終わり、タンク内への純水注入を開始、同時にデータ収集も再開した。12月には純水注入完了、12月下旬よりK2Kデータの収集も再開するに至っている。 そのような状況の中で、今年度6月、我々は2001年7月までに収集したデータをもとに、K2K実験としては初めてのニュートリノ振動を検証するための解析を行い、この解析の結果を発表した。前置検出器での測定をもとに、スーパーカミオカンデにおいて期待されるニュートリノ事象数およびエネルギースペクトルの双方を予想し、実際の観測値との比較を行い、ニュートリノ振動がない確率は1%以下であることを確認した。また、ニュートリノ振動があるとした場合に、実験結果を最も良く再現する振動パラメーターの値は(sin^22θ,Δm^2)=(1.03,2.8x10^<-3>_eV^2)であることが分かり、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノ観測から示唆される結果とコンシステントな結果を得た。この結果から、大気ニュートリノに見られた上向きニュートリノの数の欠損はニュートリノ振動現象によるものである、より強い示唆を得たことになる。 2.全感知型飛跡検出器の開発状況 昨年度の検出器の基本性能評価、実際の使用環境下でのバックグラウンド評価に引き続き、今年度は実験への導入のための諸準備を始めた。スーパーカミオカンデの事故の影響を受け、今年度12月までに本検出器の少なくとも一部をKEKのニュートリノ実験ホールに導入しなければならなくなった。そのため、スーパーカミオカンデ復旧とともに、本検出器導入のための準備も急ピッチで進められた。導入に先立ち、検出器に用いるマルチアノード光電子増倍管(MAPMT)の個々の性能評価、読み出し用波長変換ファイバーの減衰長測定・品質チェックを行うためのシステムを作り、実際に大量のMAPMT・ファイバーをプロセスするだけの機能を果たすことを確認した。また、MAPMT読み出し用のエレクトロニクスの開発も最終段階に入り、プロトタイプのボードの完成、それを使ってシグナルを読み出すことにも成功している。12月には全64層の検出器うちの4層分をニュートリノ実験ホールに導入し、データ収集を開始、3月現在においてはニュートリノ起源の信号を見始めるに至っている。今後、2003年度7月より検出器のフルインストールを開始し、10月から予定されているビームタイムでは、完全な検出器を用いてデータの収集を行う。また、検出器の振る舞いを理解するためのビームテストも行い、実際のニュートリノデータの解析に移る予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] T.Ishii et al.: "Near muon range detector for the K2K experiment : Construction and performance"Nucl.Instr.Meth.. A482. 244-253 (2002)
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[Publications] M.H.Ahn et al.: "Indications of neutrino oscillation in a 250 km long-baseline experiment"Phys.Rev.Lett.. 90. 041801 (2003)
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[Publications] S.Fukuda et al.: "Determination of solar neutrino oscillation parameters using 1496 days of Super-Kamiokande-I data"Phys.Lett.B. 539. 179-187 (2002)
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[Publications] M.Malek et al.: "Search for supernove relic neutrinos at Super-Kamiokande"Phys.Rev.Lett.. 90. 061101 (2003)