2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J03730
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 真也 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プルキンエ細胞 / 小脳 / 抑制性シナプス / シナプス可塑性 / GABA_A受容体 / GABA_B受容体 / 遺伝子発現 / インテグリン |
Research Abstract |
小脳の抑制性介在ニューロンとプルキンエ細胞間の抑制性シナプスにおいて、プルキンエ細胞の脱分極によりGABA性シナプス伝達が長時間増強される。この増強はプルキンエ細胞のGABA_A受容体を介する応答が増強されることによる。研究の目的は、この抑制性シナプスの可塑性制御の全貌を解明することである。 私たちはこれまでに、プルキンエ細胞の代謝型GABA_B受容体の活性化がこの増強を抑えることを報告し、その調節を担う細胞内情報伝達系を明らかにしててた。本研究では、このGABA_B受容体による増強抑制効果がどの程度持続するのかを検討した。初代分散培養した小脳神経細胞を高濃度のK^+とGABA_B受容体作用薬であるbaclofenを含む溶液で五分間処理すると、その後四日間以上に渡って増強が起こらなくなることが分かった。つまり、プルキンエ細胞に強い脱分極とGABA_B受容体活性化が起こると、その後数日間にわたり増強を誘導することが出来なくなるのである。 この長期にわたる増強誘導の抑制がどのような分子機構で誘起されるかを解析した。条件処理時にActinomycin DによるmRNA合成阻害やU0126等の薬剤によるMAPKカスケード阻害を行うと、長期の増強誘導抑制が起こらなくなったことから、おそらくMAPKカスケードを介して何らかの遺伝子が新規に発現されることが長期の増強誘導抑制に必要である事が分かった。 また、条件処理を行って長期の増強誘導抑制を起こしても、細胞接着分手であるインテグリンやその下流シグナル分子であるSrc型チロシンリン酸化酵素を阻害することにより増強誘導が回復した。したがって、インテグリン及びSrc型チロシンリン酸化酵素の活性により長期にわたって増強誘導が抑制されると考えられる。 これらの結果は、特定の神経活動により細胞接着分子の活性が変化して、それがシナプス伝達の可塑的性を長時間にわたって調節するという、新しい形のシナプス伝達制御機構を示唆するものである。
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Research Products
(1 results)