2002 Fiscal Year Annual Research Report
マニラにおける移住者コミュニティの形成と変容:サマール島出身者の生活史から
Project/Area Number |
01J03795
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
細田 尚美 京都大学, 東南アジア研究センター, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人の移動 / 都市化 / マニラ / フィリピン / 東南アジア / 地域史 / 社会学 / 人類学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人の移動が活発なことで知られるフィリピン中部サマール島の農村部からマニラ首都圏へ移住した人々のコミュニティ形成と変容過程について、生活史を中心に実証考察し、人の移動の民族誌としてまとめることである。先行研究レビューならびに母村での基礎データ収集を実施した前年度に引き続き、平成14年度は、移民自身に焦点を当て、サマール島の母村(B村)とマニラの分村コミュニティの両側において、彼らの生活史の聞き取りを行い、具体的な移住の契機やその後の社会関係や生計の再構築の様子、帰省状況、心境等に関するデータを集めた。さらに、帰省者の集中する5月末の村祭りの際には、全行程をつぶさに観察したほか、祭りの後に全世帯をまわり帰省者数と彼らの属性などについて尋ねた。一方、マニラ側では、B村出身者のコミュニティがある町内会の協力を得て、町内会の世帯悉皆調査を実施し、住民の年齢、性別、職業、学歴、出身地、母語などを調べた。フィリピンでは人の移動に関する研究が数多く出版されているものの、具体的データを用いながら、人の移動を通した村と都市の関係について明らかにする作業はほとんど行われてこなかった。したがって、以上の調査データは貴重な一次資料となるものと考えられ、その成果の一部は平成15年度に論文として発表する計画である。 また、平成14年度には「フィリピンにおける向都移動と開拓移動の比較-サマール島農村部の事例から-」と題する論文を発表した。開拓移動と向都移動は20世紀フィリピンにおける2大移動パターンであり、1970年ごろに移動の中心が前者から後者に移ったとされる。本論文はB村で得た移住パターンに関するデータを基に両者間の連続性と非連続性について吟味し、移動の動機は双方ともより良い生活の機会を求める「冒険」(makipagsuwertehan)の一種と捉えられるが、その「より良い生活」が実現される場に着目すると、開拓移動の場合は移動先に限られるのに対し、向都移動では移動先からの送金などを介することによって移動先だけでなく母村にまで拡大している、と論じた。
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Research Products
(1 results)