2002 Fiscal Year Annual Research Report
RNA aptamerと原子間力顕微鏡を用いた基本転写機構の解析
Project/Area Number |
01J03811
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
法邑 賢一 京都大学, 再生医科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | TBP / RNA aptamer / Paused Polymerase |
Research Abstract |
ショウジョウバエHSP70遺伝子ではRNA Polymerase IIが転写を開始した後、転写開始点から約30〜40塩基の地点でRNA合成能を保持したまま、伸長反応を停止する。この状態のRNA Polymerase IIはPaused Polymeraseと呼ばれ、HSP26, adenosine deaminase等多くの遺伝子において観察される。Paused Polymeraseは、プロモータークリアランスと伸長反応との中間段階の状態であると考えられる。これまでPaused Polymeraseの形成機構についてシス配列の解明が中心に行われてきたが、我々は基本転写因子TBPに結合するRNA aptamerを用い、複合体の構成因子及びそれらの停止における役割の解析を試みている。 TBPそのものを標的因子としてaptamerの選別を行ったところ、TBPに対して解離定数=e-9Mを示すaptamerが得られた。このaptamerはTBPのTATA配列への結合を阻害することがゲルシフトの結果から示された。またin vitro転写において、TATA配列を持つプロモーターからの転写を阻害することが分かった。これらの結果から、得られたaptamerはTBPのDNA結合表面に結合することでTBPのDNAへの結合を阻害し、転写を阻害すると考えられる(投稿準備中)。 複合体の構成因子を解析するためには、TBPの他因子との結合を阻害するaptamerが必要である。TATA配列に結合したTBPに対して選別を行ったところ、得られたaptamerの中には、TBPに対して強い結合を示す(解離定数=e-8〜-9M)ものが含まれることをゲルシフト及びSPRにより示した。SPRによる更なる解析から、これらのaptamerはTATA配列に結合したTBPに対しても同程度の解離定数を示すことを明らかにした。興味深いことに、これらのaptamerはin vitro転写に対してごくわずかな量で影響を与え、転写を促進するものと転写を阻害するものとに大別されることがわかった。これらの結果から、我々の選択したRNA aptamerは、TATA配列に結合したTBPに特異的に結合することにより、転写を促進あるいは阻害することが考えられる(投稿準備中)。 今後はこれらのaptamerがTBPに結合することで、複合体に存在するどの因子に影響を与えているのかを解析することにより、Paused Polymeraseの形成機構を解明する。
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