2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本における現生および古代イノシシ属の分子遺伝学的解析による古環境の復元
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01J03942
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
渡部 琢磨 帯広畜産大学, 獣医学科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Ancient DNA / Mitochondrial DNA / Molecular phylogenetics / Phylogeography / Sus scrofa / Japanese isldnds |
Research Abstract |
本研究では、日本列島全域の古代遺跡から出土するイノシシ骨の遺伝的性質を検討し、アジア地域に生息する現生イノシシ・ブタの遺伝的データベースとの比較から、その由来を明らかにすることを目的としている。また、日本在来のイノシシ亜種であるニホンイノシシとリュウキュウイノシシの祖先集団の検索についても試みている。 本年度は以下の点について調査・研究をおこなった。 1.現生イノシシ・ブタデータベースの拡充 ニホンイノシシの自然集団についてミトコンドリアDNA(mtDNA)コントロール領域の塩基配列情報をもちいて系統地理学的な解析をおこなっている。また、ヴェトナムのイノシシ、在来ブタから体毛などを採取し解析をすすめている。これまでのところ次のことが明らかとなった。 (1)ニホンイノシシ集団は分布パターンの異なる複数の遺伝的グループからなる可能性がある。 (2)ヴェトナムに生息する大型のイノシシはリュウキュウイノシシと比較的近縁であり、小型のイノシシは再野生化したブタである可能性が高い。 これらは、現在のニホンイノシシ集団の成立過程やリュウキュウイノシシの祖先集団に関して、重要な示唆を与える知見である。 2.日本列島内の先史および近世遺跡から出土するイノシシ骨のAncient DNA解析 現在ニホンイノシシが生息していない佐渡・伊豆諸島といった島嶼域の縄文・弥生時代の遺跡からはイノシシの骨が多数出土している。これらのイノシシ類の由来は先史時代の人々とイノシシの関わりを考える上でも興味が持たれる。また江戸時代・薩摩藩邸跡からは形態的に非常に多様なイノシシ類に骨が出土している。そこで、それらの遺跡資料についてAncient DNA分析をおこなったところ、次のことが明らかとなった。 (1)佐渡の資料から、ニホンイノシシと近縁ではあるが、明らかに異なる配列群が検出された。 (2)薩摩藩邸跡の資料にはニホンイノシシと多様なアジア系家畜ブタが含まれていた。 これらは、佐渡にはニホンイノシシから遺伝的に分岐した、固有の自然集団が生息していた可能性を示唆している。また、江戸時代・薩摩藩邸ではアジアの様々な地域に由来する家畜ブタが消費されていたことを示唆している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takuma Watanobe, Naotaka Ishiguro, Masuo Nakano: "Phylogeography and population structure of the Japanese wild boar Sus scrofa leucomystax : Mitochondrial DNA variation"Zoological Science. 20. 1477-1489 (2003)
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[Publications] Takuma Watanobe, Naotaka Ishiguro, Masuo Nakano et al.: "Prehistoric Sado island populations of Sus scrofa distinguished from contemporary Japanese wild boar by ancient mitochondrial DNA"Zoological Science. 21. 219-228 (2004)