2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J04072
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
菅生 紀之 横浜市立大学, 総合理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | DNA修復 / 神経発生 / DNAポリメラーゼβ / ノックアウトマウス / アポトーシス |
Research Abstract |
DNAポリメラーゼβ(Polβ)は、短いDNAギャップを埋める活性を持ち、塩基除去修復に関与することが明らかとなっている。また個体においては、精巣や胸腺、脳で発現および活性が高いという性質から、これら臓器の特徴である細胞の多様性形成のメカニズムとして示唆される修復・組換えへの関与が考えられてきた。しかし、個体における生理的能や疾患との関連に関しては不明な点が多く残されている。これを明かにするためジーンターゲティングによりPolβKOマウス(Polβ-/-)を作製し解析を行っている。すでに、Polβ-/-は出生直後に呼吸不全により致死となること、その原因として、発生過程の中枢および末梢神経系の広範囲で分化直後の神経細胞が異常に多くの細胞死を起こしていることを報告してきた。これにより、Polβは個体発生に必須であり、神経発生において重要な役割を果たしていることが明かとなった。この神経発生時にみられる細胞死は、何らかの要因によるDNA損傷がPolβの欠損により蓄積し、アポートシスへ誘導されたためと考えられるが詳細は不明である。この問題に取り組むため、いくつかの2重変異マウスを作製して解析を進めている。その一つである癌抑制遺伝子p53はDNA損傷により活性化され、チェックポイント制御やDNA修復、アポトーシスを誘導することが明らかとなっている。そこで、Polβとp53の二重変異マウスを作製した。その結果、p53のヘテロ変異(Polβ-/-p53+-/-)により細胞死は減少し、ホモ変異(Polβ-/-p53-/-)でほぼ完全に消失していることがわかった。このことから、Polβ-/-における神経細胞死は、p53の制御によりアポトーシスへ誘導されることが明らかとなった。しかし、予想に反してPolβ-/-p53-/-マウスは生存できなかった。解析を進めたところ、Polβ-/-で観察される脳構造の異常がPolβ-/-p53-/-でも回復しないことが明かとなった。このことから、p53欠損によりアポトーシスへの誘導を逃れた神経細胞は、その機能が完全には回復できていないと考えられる。
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