2002 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本の統治権正当化の論理に関する思想史的研究――古代天皇と儒教思想――
Project/Area Number |
01J04372
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
北 康宏 同志社大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 礼制 / 生活倫理 / 清廉使者 / 弾正台 / 巡察使 / 国司 / 畿内 / 成立期律令国家 |
Research Abstract |
平成14年度は、平成13年度成果と上記研究課題をうけて、日本律令国家成立期の支配理念の変遷を具体的な素材から明らかにする基礎研究を遂行した。特に、弾正台と巡察使の機能に注目した。 まず、6月には日本書紀研究会にて「大化二年三月甲申詔の史的位置--古代日本の礼支配--」と題した研究発表を行なった。古墳の規格にばかり目が向けられがちな薄葬令ではあるが、それは先行する古墳造営の時代が先ず批判の対象になったからに過ぎず、その対象範囲は決して古墳造営の層に限られるものではなく、庶民の葬礼普及にまで及んでいる。また、見聞きしたことの正直な発言を求めた上で、婚姻や訴訟など広い範囲での生活にまで立ち入る極端な倫理支配の形には、全階層への礼秩序の普及を目指す趣旨が見て取られる。これを普及させる役割を担わされたのが清廉使者であって、畿内と畿外とで別の枠組みで発遣された。また10月には、続日本書紀研究会にて「古代国家と生活倫理に関する覚書--弾正台成立の背景--」の研究発表を行なった。ここでは、先の始点をさらに展開して、大化の清廉使者の制度に確認される新たな礼を基礎にする支配システムは、弾正台の機能へと受け継がれるものであることを示し、弾正台が唐の御史台を真似て創始された君主による官人監察機関であるという点のみを重視する従来の弾正台研究を批判して、その背後にある古代日本特有の民衆支配の思想構造にメスを入れた。また国司の第一の職掌「粛清風俗」もまた、その支配理念の分掌として位置付けることができるとした。さらに畿内の弾正台と初期の巡察使の分掌関係、さらに弾正台の礼支配が京内に縮小されていく過程を歴史的に明らかにすべく基礎研究を進めた。 以上、日本律令国家の成立期について、単に制度の変遷のみに注目するのではなく、支配理念という思想的・倫理的側面から分析を加えることを通して、新たな歴史像を生み出すことを試みた。
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Research Products
(1 results)