2002 Fiscal Year Annual Research Report
南インドにおける宗教の再生と権力―ケーララ州のテイヤム儀礼を事例として
Project/Area Number |
01J04457
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 万由里 (古賀 万由里) 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | インド / ケーララ / テイヤム / 文化人類学 / 儀礼 / アート |
Research Abstract |
儀礼の文化人類学的研究では、シンボルが意味をもつとする意味中心アプローチと、実践すること自体が重要であるという行為中心アプローチが拮抗しているが、パフォーマンスとしての要素が強い、インド・ケーララ州の儀礼「テイヤム」では、意味は、歴史的、社会的、文化的に構築されるという第三のアプローチが有効である。 イギリス図書館にある記録によると、イギリス植民地時代のインド・ケーララ州(当時マラバール)における儀礼的慣習に対する英国人や宣教師たちの見解は、「野蛮」な「悪霊踊り」または「悪霊払い」であり、正さなければならないものであった。一方、インド人はイギリス人の民俗儀礼に対する無理解を逆手にとり、反イギリス思想を広めるプロパガンダとして用いていた。 1月に調査したカリヴェルール・ムッチロートゥ女神寺院(ワーニヤ・カーストの寺院)のテイヤム祭礼では、祭礼委員会による神話とカースト起源説の解釈が、ワーニヤ・カーストのバラモン・ヒンドゥー化、アーリヤ化と結びつけてなされていた。一方、文化プログラムとして催されたフォークロア、アートに関するセミナーでは、共産党シンパの民俗学者や批評家による、テイヤム、フォークロアの共産党主義的解釈がなされていた。観衆の態度、動機は様々であり、儀礼組織者、参加者の影響を受けながら価値観を構築していく。テイヤムは宗教的行為としての儀礼だけではなく、政治、文化、社会的活動の場であり、多様に解釈され意味づけがなされていく、生成されるパフォーマンスであるということが分かった。
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