2003 Fiscal Year Annual Research Report
南インドにおける宗教の再生と権力-ケーララ州のテイヤム儀礼を事例として
Project/Area Number |
01J04457
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 万由里 (古賀 万由里) 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | テイヤム / 儀礼 / 神話 / 政治 / 生成 / ケーララ / インド / パフォーマンス |
Research Abstract |
南インド・ケーララ州北部で実践されているテイヤム(神霊)儀礼にまつわる神話・伝承を収集し、その解釈の変容を分析することによって、神話が一元的ではなく多元的であり、政治的権力や現地人の意図的解釈により、生成されていくものであることを明らかにした。 現地調査では、8月16日から29日にかけて、ケーララ州カサルゴッド県とカンヌール県で祀られているムッタッパン神とポッタン神を中心に、それらの神話と伝承を、寺院に関わる人々および地元住民から聞き取り調査を行った。 その結果、ムッタパン神話は、1)山岳部の部族の祖先神としての信仰、2)高位カーストによる侵略と祭祀様式・神話のヒンドゥー化、3)平地の低位カーストの台頭による巡礼寺院化、4)地域社会を超えて都市部、海外への伝播、といった段階をふまえて発展していることが分かった。 また、ポッタン神話では、地元では不可触民がバラモンによって殺されたという語りがみられるが、一般には、バラモン僧侶が不可触民に諭されるといったヴェーダーンタ哲学的ストーリーが民俗学者らによって普及され、コミュニストらに利用されていることから、神話の政治的利用がみられた。 従来の儀礼論では、儀礼は象徴的意味をもつものであるとする意味中心的アプローチと、儀礼は意味をもたない行為であるとする行為中心的アプローチがとられてきた。だが、テイヤム儀礼は、政治や観光化、商業化と関連して、組織者とパフォーマーと観客との間の相互作用によって意味が構築されているパフォーマンスであることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)