2003 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザの宿主域拡大および病原性獲得のメカニズム解明に関する研究
Project/Area Number |
01J04596
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 恭子 (新矢 恭子) 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | インフルエンザ / 宿主適応 / リバースジェネティクス法 |
Research Abstract |
最近我々が明らかにしたinfluenza A virusのneuraminidase (NA) viral RNA (vRNA)分節におけるpackaging signalを利用して、NA分節ORF部分にGFP geneを有するmutant virus (GFP(NA)-Flu)を作成した。本ウイルスは、wild型に比較して通常のMDCK細胞での増殖率が低かったが、シアル酸含量が低いMaKS細胞を用いた場合には、10^6pfu/ml以上増殖した。本ウイルスは、細胞での数回の継代後もGFP geneを含有したNA分節の保持率が安定しており、また、マウスへの経鼻接種後、GFP蛍光が呼吸器系の組織で接種後4日目まで検出された。本ウイルスの生ワクチンとしての効果を致死量のwild型ウイルスを暴露して検討したところ、1×10^5pfu以上のGFP(NA)-Fluで免疫したマウスにおいて生存が確認された。これらの結果から、influenza A virusが外来遺伝子を発現するための有用なvectorになり得ること、NA遺伝子が欠損したウイルスが生ワクチンとして役立つ可能性を示した。 また、influenza A virusのPB2蛋白627番目のアミノ酸(aa)置換(E to K)は、本来水禽をreservorとするinfluenza A virusの人への適応反応過程において重要な変化である可能性が示されている。我々は、1997年に香港で人から分離されたH5N1ウイルスでは、マウスに対して非致死性のウイルスが、PB2蛋白627番目の同アミノ酸置換により、致死性のウイルスに変化することを示した。今回我々は、この病原性の相違の機序を明らかにするため、様々な宿主由来の細胞における増殖効率の比較およびマウス体内における感染細胞の同定とウイルスの経時的な分布比較を行なった。その結果、鳥由来およびMDCK細胞では、PB2-627aa置換によるウイルスの増殖効率の相違が明らかではないが、マウス由来細胞では由来組織に関わらず一貫してPB2-627Kを保持するウイルスの増殖が優位であった。マウス体内では、増殖効率の差がそのまま各器官および体内での分布速度に影響した。第一増殖器官である肺における分布速度の違いは、同器官内における免疫反応にも影響を与えた。我々のデータは、influenza A virusのPB2-627番目のアミノ酸は、感染細胞の嗜好性に影響するものではなく、マウスの細胞内でウイルス増殖の効率を変化させることを示している。 香港H5N1ウイルスを用いた実験は、全て出張先のUniversity of Wisconsin-Madison, School of Veterinary Medicine, Department of Pathobiological Science (10/15/03〜11/30/03)で行なった。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] Shinya K, Hamm S, Hatta M, Ito H, Ito T, Kawaoka Y.: "PB2 amino acid at position 627 affects replicative efficiency, but not cell tropism, of Hong Kong H5N1 influenza A viruses in mice."Virology. 320・2. 258-266 (2004)
-
[Publications] Shinya K, Fujii Y, Ito H, Ito T, Kawaoka Y.: "Characterization of a neuraminidase-deficient influenza a virus as a potential gene delivery vector and a live vaccine."Journal of Virology. 78・6. 3083-3088 (2004)