2002 Fiscal Year Annual Research Report
非一様双曲型力学系のマルチフラクタル解析およびエルゴード理論的性質の研究
Project/Area Number |
01J04606
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中石 健太郎 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 高次元連分数アルゴリズム / 同時近似 / ランダムアルゴリズム / リャプノフ指数 |
Research Abstract |
昨年度に引き続きBaladi-Nogueiraによって導入された高次元連分数アルゴリズムのツリーの研究をすすめた。2次元の場合にはランダムアルゴリズムも含めて強収束性を確立できた。ランダムアルゴリズムをランダムダイナミックスの枠組みで扱うためには不変測度を構成する必要があるが、Renyi条件がパスに依らずに一様に成り立っていることに注目することで力学系の場合の手法の修正で対応できる。この結果は2次元のみならず一般次元でも証明できる。簡単な結果ではあるが、ランダムダイナミックスの現在の研究の軸は微分同相写像を中心にしており、他方我々の扱う写像は区分的に微分可能な上への写像であって、すでにある一般論からは出ない。その意味では一言述べておく価値はあるであろう。またランダムアルゴリズムに対応したLagariasの定理も証明できる。これはアルゴリズムの効率をはかる収束指数がアルゴリズムに付随する非負整数行列のコサイクルのLyapunov指数で書けること主張する定理である。この定理は証明よりも必要な条件の確認に技巧を要する。トラップつきのグラフ上の酸歩に似た状況を扱う必要が出てくるところが目新しい。強収束性の帰結として二番目のLyapunov指数が真に負であることが分かる。一番目は正であることは計算から容易にわかる。 2次元と3次元以上では本質的に事情が異なっていることが明らかになってきた。3次元以上で同時近似の強収束を支配する数学的構造はまだ見えてこない。数値計算ではどの次元でも強収束すると予想されている。3次元以上の強収束に関してはKhanin-Hardcastleの数値計算に基づいた証明(computer-assisted proof)があるのみである。我々の場合、特殊な3次元アルゴリズムの強収束性は示すことができる。「数学的証明」としては最初のものであると思われるが2次元的な特殊な状況になっていることに起因するため一般論たりえない。これから解明すべき課題である。
|
Research Products
(1 results)