2003 Fiscal Year Annual Research Report
非一様双曲型力学系のマルチフラクタル解析およびエルゴード理論的性質の研究
Project/Area Number |
01J04606
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中石 健太郎 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高次元連分数アルゴリズム / 非一様双曲型力学系 / リャプノフ指数 / 同時近似 / 連分数 |
Research Abstract |
今年度は3次元以上の一般次元の高次元連分数アルゴリズムの強収束問題の手がかりをつかむことに力を注いだ。アルゴリズムが殆ど至るところ強収束であることを示すことと、アルゴリズムに対応する行列のコサイクルの2番目のLyapunov指数が負であることは同値である。1番目が正であることは大抵の場合容易である。すなわちアルゴリズムに対応する力学系が非一様双曲型であることを示すことになる。問題の性質からこれはディオファントス近似に現れる量D_{n}がnに関して指数減衰することをしめせば十分になる。今まで手がけてきたJacobi-Perronアルゴリズムに代表される乗法型アルゴリズムではなくSelmerアルゴリズム・Brunアルゴリズムなどのいわゆる加法型アルゴリズムに取り組み、2次元加法型アルゴリズムについても殆んど至るところ強収束することを示すことができた。現在3次元以上について研究中である。加法型は背後にある力学系との関係が乗法型と異なり陰に隠れるため、力学系の軌道を利用した評価が不可能になる。これを回避するために弱収束を仮定した下で生ずる軌道の制限に注目するとD_{n}の絶対値が広義単調減少であることが分かる。特にある条件を満たす連続軌道(それはほとんど至るところの軌道に対して無限回含まれる)下ではこの制限と双曲型不動点近傍の力学系理論とを組み合わせることによりD_{n}の絶対値がこの連続軌道の間は一様に縮小的であることを得る。 一方3次元以上の乗法型アルゴリズムではこの方法でも困難が生ずる。これは2次元の場合のLyapunov指数の計算は各変数の独立性が高くそれぞれの評価がうまく得られるのに対し(それゆえ第2Lyapunov指数<0以上を示せる)、3次元以上では本質的に各次元が絡み合ってくることに起因する。従って最終的にはすべての方向を考慮にいれた評価をするべきであり、コロンブスの卵のようであるが、むしろこちらの方が問題に即した自然な評価とみなせることが明らかになってきた。この究明に合わせて乗法型と加法型アルゴリズムの関係の定式化も必要となるであろう。
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