2002 Fiscal Year Annual Research Report
π-電子系と構造相転移をともなう表面との相互作用に関する研究
Project/Area Number |
01J04615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯泉 謙一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | π-電子系 / ペンタセン / 電子構造 / LEELS / 三重項励起子 / Cu(110)表面 / RHEED / 相互作用 |
Research Abstract |
平成14年度は平面型π-電子系としてペンタセンについて研究をした。ペンタセンはキャリアの移動度が高く、有機FETとして有望な物質の一つとして応用面から盛んに研究されている。研究代表者はなぜ移動度が高いかについて議論するためにはペンタセンの電子状態を調べることが不可欠であると考え、低速反射型電子エネルギー損失分光(LEELS)を用いてその電子構造を明らかにし、エネルギーダイアグラムを作成した。LEELSは選択則が光学的な測定とは違い、双極子遷移のみならず、単極子や四重極子といった遷移も観測可能であり、またスピンフリップをともなった遷移も観測可能である。研究代表者は初めてペンタセンの三重項励起子を直接観測することに成功した。これはLEELSがスピンフリップをともなった遷移を観測した一例である。 これまでにペンタセンのエピタキシャル膜の作成に成功したという報告は皆無であり、唯一、走査トンネル顕微鏡観察によりペンタセンがCu(110)表面上では1次元配列するという結果が報告されている。研究代表者は反射高速電子線回折(RHEED)を用いてCu(110)表面上ペンタセン薄膜の構造を明らかにするとともに、ペンタセン薄膜の電子状態を調べることによってCu(110)表面とペンタセン薄膜の相互作用を明らかにすることを目的に研究を行った。構造に関してはRHEED観察により、[001]方向でペンタセンが2nmの間隔で配列し、それと垂直方向ではCu-Cu原子間距離の2倍に配列することが確認された。Cu(110)表面とペンタセン薄膜の相互作用に関してはLEELSをはじめとした電子分光によってその相互作用が調べられつつある。
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Research Products
(1 results)