2002 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属化合物に対する共鳴X線発光スペクトルの偏光依存性の理論
Project/Area Number |
01J04633
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 雅彦 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遷移金属化合物 / 共鳴X線発光スペクトル / 偏光依存性 / NiO / 不純物アンダーソンモデル |
Research Abstract |
本研究では,前年度に行った,一連の軽い遷移金属化合物を対象とした偏光依存共鳴X線発光分光法(RXES)の系統的な解析の結果を踏まえて,対象物質を重い遷移金属化合物に移して同様の解析を行った. 重い遷移金属化合物の解析は,主としてNiOを対象物質に選んで行った.本研究では,まずはじめに固体パラメータの決定を行った.具体的には,従来からパラメータの決定に用いられてきた,価電子帯のX線光電子分光法(v-XPS)及び内殻準位のXPSの解析に加えて,X線吸収分光法(XAS)及びRXESの解析も行い,これらにより得られるスペクトルを同時に再現するようにパラメータを選ぶことで,ほぼ一意的にその値を決定することに成功した.続いてこのパラメータを用いて2p→3d→2p及び1s→4p→1sという,励起・発光過程の異なる2種類のRXESスペクトルの計算を,入射光の偏光方向が散乱面と垂直な配置(散乱角は90°)の場合に関して行い,実験結果との比較を行った.両実験結果において特徴的であったのは,入射光エネルギーの変化に応じて非弾性散乱スペクトルが約5eVと約8eVという2箇所にシフトして現れてくるという点であった.このようなスペクトルの振る舞いは,配位子のバンド幅を考慮しないクラスターモデルでは再現できないのだが,バンド幅を考慮した不純物アンダーソンモデルでは再現できるということを示し,更に5eVのピークは配位子バンドの下端に,8eVのピークはバンドの上端にそれぞれ対応して増大しているということを突き止めた. 本研究の成果は6月に行われた国際会議で発表しており,その成果をまとめた論文は現在準備中で,近日中に投稿する予定である.
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