2003 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属化合物に対する共鳴X線発光スペクトルの偏光依存性の理論
Project/Area Number |
01J04633
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 雅彦 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 共鳴X線発光 / 偏光依存性 / Sc化合物 / V化合物 / 混成相互作用 / 多重項相互作用 |
Research Abstract |
本研究では,過去二年間に行った一連の遷移金属化合物を対象とした偏光依存共鳴X線発光分光法(RXES)の系統的な解析の結果を踏まえて,いくつかの物質系を選んで更なる解析を行なった. 対象としたのは3d^0であるSc3ハロゲン化物(ScF_3,ScCl_3,ScBr_3),3d^<0.5>から3d^2にわたるV酸化物(NaV_2O_5,VO_2,NaV_2O_7,V_2O_3)である. Sc3ハロゲン化物に関しては非結合状態に対応するRXESのスペクトルに注目した.このスペクトルは結晶場によりt_<2g>とe_gの性格を持つ2つのピークに分裂している.一方XASのスペクトルはスピン-軌道相互作用と結晶場により主に4つのピークに分裂しており,単純な一電子描像からは低エネルギー側からそれぞれ(A)L_3t_<2g>,(B)L_3e_g,(C)L_2t_<2g>,(D)L_2e_gの性格を持っていることが期待され,A, Cで共鳴させた場合には非結合状態RXESスペクトルのt_<2g>ピークが,B, Dで共鳴させた場合にはe_gピークがそれぞれ共鳴増大することが予想される.実際ScF_3の実験結果ではそのようになっている.しかしながらScCl_3,ScBr_3の場合にはDで共鳴した際にe_gではなくt_<2g>ピークが共鳴増大するという一電子描像とは矛盾した結果となっていた.この理由を調べるためにクラスターモデルによる計算を行い,混成及びクーロン相互作用の多重項部分の寄与を徐々に変えてRXESスペクトルの解析を行った結果,ScCl_3とScBr_3では強い混成相互作用と多重項相互作用の効果によってXASのDのスペクトルは純粋なe_g状態ではなくt_<2g>とe_gの混ざった状態になっており,ScF_3では混成効果がさほど強くないためにほとんど純粋なe_g状態になっているということを突き止めた. また,V酸化物に関しては上述のさまざまな物質に対してRXESの解析を行い実験との比較を行った.いずれにおいてもRXESは純粋なV3d状態とV3dとO2pとが強く混成した状態からなっていることをクラスターモデル計算によって示した.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Schmitt, L.-C.Duda, M.Matsubara, et al.: "Resonant X-ray emission spectroscopy of doped and undoped vanadium oxides"Journal of Alloys and Compounds. 362. 143-150 (2004)
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[Publications] M.Matsubara, Y.Harada, S.Shin, T.Uozumi, A.Kotani: "Resonant X-Ray Emission Spectroscopy in Scandium Halides"Journal of the Physical Society of Japan. 73・3. 711-718 (2004)
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[Publications] T.Schmitt, L.-C.Duda, M.Matsubara, et al.: "Electronic structure studies of V_6O_<13> by soft x-ray emission spectroscopy : Band-like and excitonic vanadium states"Physical Review B. 69・12. 125103 (2004)