2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J04661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿諏訪 青美 東京大学, 史料編さん所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 寺社公人 / 庶民信仰 / 信仰経済 / さい銭 / 勧進 / 寄進 / 中世寺社 |
Research Abstract |
中世寺社の庶民信仰とそれに関与する寺社公人についての研究の中で、今年度はつぎの二点を行った。 一つには、寺社の経済活動を象徴する「寺蔵」の存在を明示し、その活動を寺家公人を中心に解明していった。そもそも従来の寺院の経済活動は荘園を保持し管理する供僧(学僧)によっておこなわれていたと考えられていた。確かに、たとえば作成された算用状の最終的な監査(算勘)は、供僧たちの合議の下に行われたが、実際の細かな収支計算や貸借、物品の保管に携わったのは寺家公人たちであり、供僧もまた自らの給分下行を公人たちから受けていた。これらから中世寺社の経済活動の根幹である蔵を経営していたのは、寺家公人であることが明らかとなった。 二つ目は、洛中東寺以外の寺院におけるさい銭とその行方を追った。対象とした東山六道珍皇寺は、冥界への入り口との伝説をもつ鎮魂の寺で、孟蘭盆の間には参詣客が殺到した。その様子を伝える参詣曼荼羅をもとに、さい銭の存在とそれを巡る利権争いをみた。実際に寺を管理する執行には近隣寺院の僧が任じられて、さい銭の一部収集を許可されていたが、その場所と金額が規制されていることから、珍皇寺にはさらに多くのさい銭が集まっていたことが明らかとなった。中世都市にはさい銭で多くの稼ぎをあげる寺社が数多く存在したといえよう。 以上、都市寺社の庶民信仰を寺社公人の視点から解明してきた。最終の今年度は、いままでの研究の集大成として、『中世庶民信仰経済の研究』(校倉書房)を刊行することができた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 阿諏訪 青美: "中世後期にみる六道珍皇寺のさい銭"遙かなる中世. 20. 56-72 (2003)
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[Publications] 阿諏訪 青美: "中世後期の東寺にみる寺家経済の構造"年報中世史研究. 28. 165-186 (2003)
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[Publications] 阿諏訪 青美: "中世庶民信仰経済の研究"(株)校倉書房 石田 亘. 412 (2004)