2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞におけるアミロイド前駆体タンパク質の生理機能の解明
Project/Area Number |
01J04693
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
飯島 浩一 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | APP / JNK / 蛋白質リン酸化 / β-アミロイド / アルツハイマー病 / JIP / PI / DLK |
Research Abstract |
APPはアルツハイマー病(AD)患者の脳に検出される老人斑の主成分β-アミロイド(Aβ)の前駆体タンパク質であり、細胞内におけるAβの産生・細胞外への分泌と凝集・蓄積がADの発症に係っていると考えられている。APPは一回膜貫通型受容体様の構造をもつ膜タンパク質であり、細胞質ドメインがAPPの代謝や生理機能の調節に重要な役割を果たしている。私は、APPの細胞質ドメインの機能に着目して、細胞質ドメインと相互作用する因子の機能解析を行った。酵母two-hybrid法を用いて、APPの細胞質ドメインに結合するタンパク質の単離・同定を行ったところ、JNKのスッキャフォールドタンパク質であるJIP1bを見出した。JIP1bは、アミノ末端にJNK結合モチーフを持ち、カルボキシ末端側にSH3ドメインとPI(phosphotyrosine Interaction)ドメインがあることが判明した。cDNAの部分欠失コンストラクトを作製して、細胞に発現させAPPと結合する部位の同定を行ったところ、PIドメインがAPPの細胞質ドメインのNPTY配列と相互作用する事を明らかにした。同時にマウスJIP1aおよびJIP2のcDNAも単離して解析を行ったところ、JIP1aは弱くAPPと結合するが、JIP2とAPPの結合は非常に弱いことが明らかになった。 JIPはJNKのスッキャフォールドタンパク質であるので、JIPとAPPの結合がAPPのJNKによるリン酸化に影響を与えるかどうか検討した。APPは昨年度報告したように細胞質ドメインのThr668サイトでリン酸化を受ける。私は、このリン酸化が神経細胞ではCDK5でリン酸化されることを報告してきたが、リン酸化サイトの周辺配列を検討した結果、JNKによるリン酸化もあり得ることが判明したため、細胞にJNKの上流キナーゼであるDLK(dual leucine zipper-bearing kinase)を発現させ、APPのリン酸化を検討した。その結果、APPはDLKの発現によりThr668でリン酸化されることを見出した。この発現系にJIP1bをさらに発現させたところ、APPのリン酸化レベルは上昇したが、APPとの結合の弱いJIP1aおよびJIP2を発現したときには、その効果は見られず、むしろリン酸化レベルは低下した。このことから、JIP1bはJNKと結合しJNKをAPPに近づける役割を果たしていると考えられた。逆にJIP1aおよびJIP2はJNKをAPPにアクセスしにくくさせている可能性が示唆された。リン酸化はAPPの機能・代謝に重要な役割を果たしており、その調節機構としてJIPタンパク質が働いていると考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Taru, H., Iijima, K., Suzuki, T.: "Interaction of Alzheimer s b-amyloid precursor family proteins with scaffold proteins of the JNK signaling cascade"The Journal of Biological Chemistry. 277. 20070-20078 (2002)