2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J04719
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋富 創 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 経済史 / イギリス / 第一次世界大戦 / 経済政策 / 通商政策 / 西洋史 / 西洋経済史 / イギリス史 |
Research Abstract |
本年度は「第一次世界大戦期イギリスにおける通商政策構想」に関する考察を精緻化するために、次の2点に関して新たな検討を加えた。 (1)1917年前半期以降における通商政策構想 過去2ヶ年における研究は、1917年前半期までのイギリス通商政策に関して、いわゆる「第三」路線の存在を実証するものであったが、今年度はそれを1917年後半期にまで拡大し、大戦中の構想の最終段階を析出しようとした。具体的には、当時の代表的な政府委員会であるバルフォア委員会の議事録や証言録、あるいは同様の一次史料を参照することによって、大戦中の通商政策構想が最終的にいかなる形でまとめられたのか、という点について検証した。その結果、中間財輸入に依存する、特殊イギリス的な自由貿易政策の実態が明らかにされ、通商政策が産業構造と密接につながっていたという新たな論点が浮かび上がった。 (2)19世紀における商務省の通商政策 次に我々は、このような大戦中の構想の意義を歴史的に相対化するために、19世紀以降の商務省の通商政策史を検証するという作業を行った。19世紀前半期の商務省は、レッセ=フェールの忠実な執行役であった一方で、後半期には積極的に通商情報Commercial Intelligenceを収集・分析する役割を引き受け、個人企業を援助する姿勢に転換した。関税政策にまで踏み込んだ大戦中の「第三」路線とは、19世紀後半期に転換した、このような商務省の通商政策の延長線上に位置づけられ得るのである。 以上の論点はいずれも、これからの研究にいかされるべきものであり、現在は(2)に関する投稿論文を執筆中である。
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