2002 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の嗅覚とその可塑性におけるRas-MAPキナーゼ経路の作用機構の解明
Project/Area Number |
01J04872
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広津 崇亮 東京大学, 遺伝子実験施設, 特別研究員(PD)
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Keywords | 線虫 / 嗅覚可塑性 / 介在神経 / Ras-MAPK経路 / グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
線虫にあらかじめ匂い物質を5分間嗅がせると、その匂い物質に対する化学走性が低下する。この嗅覚可塑性には、嗅覚神経AWA、AWCから直接インプットを受ける介在神経AIYが重要な働きをしている。Ras-MAPK経路は匂い刺激への応答(化学走性)に関与することが既にわかっていたが、この経路は嗅覚可塑性においても何らかの機能を果たしていることがわかってきた。 1.そこで本年度は、Ras-MAPK経路がそれぞれの現象においてどの神経で機能しているかについて重点的に解析を行った。嗅覚神経AWCあるいは介在神経AIYのみに野生型let-60Ras3を発現させ、let-60(1f)変異体の欠陥をレスキューするか調べたところ、介在神経AIYでの発現は可塑性の欠陥をレスキューしたが、化学走性の欠陥はレスキューしなかった。反対に、嗅覚神経での発現は、化学走性の欠陥をレスキューするが、可塑性の欠陥はレスキューしなかった。このことは、Ras-MAPK経路が異なるタイプの神経で異なる働きをしていることを示唆している。 2.可塑性にはグルタミン酸受容体GLR-1が関与しているという知見を既に得ている。Ras-MAPK経路とグルタミン酸受容体が同じ神経で働いているか見るために、glr-1プロモーター下でlet-60を発現させるレスキュー実験を行った。その結果、RasとGLR-1が同じ神経で機能していることが示唆された。現在、実際にGLR-1が介在神経AIYで機能しているかを調べるために、AIY特異的にGLR-1を発現させるレスキュー実験と、let-60変異体においてGLR-1の局在に異常が現れるかについて解析を進行中である。 3.これらの成果は第3回線虫日本集会、West Coast Worm Meeting 2002、第25回日本分子生物学会年会において発表した。また、科学誌に論文投稿中である。
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