2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J04875
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棟方 有宗 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | サクラマス / 回遊行動 / 降河行動 / 母川回帰行動 / 成長ホルモン / コルチゾル / テストステロン / アンドロゲン |
Research Abstract |
一般に,サケ科魚類の多くは川から海へと数年間にわたって大回遊を行うことが知られている.これまでにサケ科魚類の一種であるサクラマスの銀化魚をモデル実験魚として種々のホルモン投与による行動観察実験を行ったところ,サクラマスの降河(回遊)行動の発現は,性ホルモンの一種であるテストステロンの投与によって強く抑制されることが明らかとなった.つまりこのことから,サクラマスが川から海へと降河(回遊)行動を行うかどうかは,テストステロンなどのアンドロゲンによって発現が抑制的に調節されていることが考えられた. 上記のことをふまえて本年は,サクラマスの降河行動の発現促進因子について検討した.そのためサクラマスの銀化魚に,降河行動の準備として起こる銀化変態の誘導因子と考えられているコルチゾルおよび成長ホルモンを投与し,実験水路において降河行動が発現するかどうかを観察した.その結果,サクラマスの銀化魚の降河行動は,特にコルチゾルの投与によって発現が促進されることが判明した.このことからサクラマスでは,テストステロンなどの性ホルモンの血中量が高いことにより回遊行動の発現が抑制され,これとは逆に血中の性ホルモン量が低く,コルチゾルの血中量が多いことにより降河(回遊)行動の発現が促進されることが明らかとなった.性ホルモンは性成熟と,またコルチゾルはストレス応答と関係が深い生理因子であることから,サクラマスでは個体が性成熟に向かうか,あるいは性成熟をせず,さらにストレス環境下に置かれるかどうかによっても回遊行動の発現の有無が調節される可能性が示された.
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Research Products
(2 results)