2002 Fiscal Year Annual Research Report
現代インドにおけるヒンドゥー・ナショナリズムの宗教学的研究
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01J04899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 光博 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 南アジア / ナショナリズム / ヒンドゥー教 / 民主主義 / 政党 / 中間層 / 暴力 / 原理主義 |
Research Abstract |
1)ヒンドゥー・ナショナリスト運動が1980年代半ば以降、インド連邦レベルでの民主議会政治において台頭した背景を考察した。第一に、ヒンドゥー・ナショナリスト政党であるインド人民党の成長を説明するには、宗教的熱狂と排他的民族意識の高揚という条件が支配的であった93年以前の時期と、独立インド政治の制度疲労にともなう有権者の不平不満の表出という条件が支配的である95年以降の時期とのあいだで区別を設けることが必要であることを明らかにした。第二に、これらの傾向がとくにインド中間層の政治文化の展開と並行していることを論じた。すなわち、中間層の多様な志向や欲望が、ヒンドゥー・ナショナリスト・イデオロギーにおいて明確に表出されているとともに、彼(女)らこそがこの運動を支える最も重要な支持基盤であることをイデオロギー分析の手法によって明らかにした。 2)ヒンドゥー・ナショナリスト運動の政治的成功を、現代世界における「宗教復興」現象の一事例として解釈する理論枠組みについて考察をおこなった。第一に、本研究は、現在流布している多くの「宗教復興」論に意義を唱えるかたちで、世俗化/近代化/西洋化に対する単なる反動として「宗教復興」現象をとらえるべきではなく、そこにおいて追求されている世俗的・西洋近代的理想についても十分な理解が必要であることを論じた。第二に、現代宗教論においては、原理主義と宗教ナショナリズムを概念として混淆させるべきではないことを論じた。ヒンドゥー・ナショナリズムを原理主義と呼ぶことは、多くの誤解をうむことになるだろう。そして第三に、「宗教復興」現象における暴力の様態について比較研究をおこなうことの必要性を論じた。そこでは、ミクロとマクロのレベル設定を施し、とくにマクロ・レベルにおいては直接的暴力の陰に隠れてしまいがちな構造的暴力に焦点を当てるべきことを明らかにした。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 比較政治学会(編): "現代の宗教と政党:比較のなかのイスラーム"早稲田大学出版部. 255 (2002)
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[Publications] 堀本武功, 広瀬崇子(編著): "講座現代南アジア3 民主種へのとりくみ"東京大学出版会. 267 (2002)