2003 Fiscal Year Annual Research Report
現代インドのヒンドゥー・ナショナリズムの宗教学的研究
Project/Area Number |
01J04899
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 光博 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 原理主義 / 宗教と政治 / イデオロギー / ヒンドゥー教 / インド近代史 |
Research Abstract |
平成15年度において私は、1980年代から90年代にかけてのヒンドゥー・ナショナリスト・イデオロギーの歴史的、構造的分析をおこなった。用いた一次資料は、これまでの数年間インドやイギリスへと赴むことで、私が現地で直接収集したものばかりである。ほとんどが英語、一部ヒンディー語のものが含まれる。また、現地においておこなった主要イデオローグたちとのインタヴューの記録も用いた。分析の視点としては、彼らのイデオローグたちが、その言説戦略を通じて、ヒンドゥー教をどのようなものとして構想し、またそれをナショナリズムと暴力へとどのように接続するかという問いを掲げた。この分析によって明らかになったのは、第一に80年代から90年代にかけて彼らのイデオロギーは通時的、共時的にかなり安定した構造を保っていたこと、第二に、宗教とナショナリズムを接続するのは「文化」という範疇であること、そして第三に、彼らの語りが有する物語や形而上学の形式が大衆の神話的想像力を強く刺激し、動員促進に大きな役割を果たしていることなどである。 また、上記イデオロギー分析の成果をもとに、ヒンドゥー・ナショナリズムという運動ないしは現象が、現代世界における「宗教復興」の一例としてどのように史的に位置づけられるかという点についても研究をおこなった。そこから導き出された結論は、第一に、現代甚だしく混用されている原理主義と宗教ナショナリズムという二つの概念の区別が必要であること、第二に、反近代、反世俗、反西洋などの機制をこれら諸現象/運動のなかにあまり強く読み込むべきではないこと、そして第三に、比較宗教的な現代宗教論は文明論のような地政学的な分類学と比較研究をおこなうべきではない、ということであった。
|