2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J04917
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 隆道 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文意認識 / 聖典解釈学 / 文法学 / クマーリラ / シュローカ・ヴァールッティカ / スチャリタミシュラ / カーシカー注 / ヴァーキヤ・パディーヤ |
Research Abstract |
1.『シュローカ・ヴァールッティカ』とその注釈『カーシカー注』「文論題」のテキスト校訂 昨年度に引き続いて、七世紀の聖典解釈学者クマーリラ・バッタの著作『シュローカ・ヴァールッティカ』の写本に基づく校訂作業を行った。特に本年度は、確定見解部(kk.110cd-369)に作業をすすめ、「文論題」全体、そして未出版であるその注釈書『カーシカー注』の校訂テキストをほぼ完成させることができた。次年度には、さらに新たな写本をヨーロッパ、インドから収集し、比較参照することにより、テキストの精度を高める予定である。 2.『シュローカ・ヴァールッティカ』「文論題」の分析・訳注作成 上記(1)のテキストを用いて、前年度に引き続き訳注を作成、それに基づく分析を行っている。「文論題」前主張部(kk.1-110ab)では、「すべての文意認識は錯誤とならざるをえない」という極めて強固な懐疑論が展開されている。そこでは、伝統的に文法学派と聖典解釈学派において育まれてきた意味論がまとまった分量で提示されているのみならず、文のなかで語が持ちうる統語的関係が、名詞、動詞から、接頭辞、否定辞にいたるまで徹底的に否定されるという議論内容そのものが、インド古典を見渡してみても稀有であり、非常に価値ある資料を提供している。この前主張部に関して特に重点的な分析を試み、論考を発表した(裏面参照)。 3.文意認識論の原初的形態の解明 文意認識論は、元来独立した一領野をなすことはなく、極めて土着的・専門的な言語分析、聖典解釈を背景として発達してきたものである。従って、その原初的形態の解明のためには、『マハーバーシュヤ』、『シャーバラバーシュヤ』、『タントラ・ヴァールッティカ』などの膨大な資料群のなかから、文意認識に関する議論を抽出・分析する必要がある。現在その作業を行っており、来年度も継続する予定である。なお、補助作業として、五世紀の言語哲学文献『ヴァーキヤ・パディーヤ』第一巻とその自注のテキスト・データベースを作成した。
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Research Products
(1 results)