2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J04918
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原澤 賢充 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 視覚心理学 / 視覚情報処理 / 心理物理学 / テクスチャ / 方位 / 境界線 |
Research Abstract |
自然画像において,画像を構成する成分が時々刻々と変化するにもかかわらず境界線は安定して見えることがある.このような知覚現象が生じる原因として,境界線を表現する信号が知覚過程に置いて増強されていることが考えられる.本年度はこのような現象の基本となる境界線信号の加算現象について実験心理学的な研究を行った. 方位で定義された差異によって分離可能なテクスチャを何枚か用意してこれらを順に提示していくと,方位の違いが極めて小さい場合にも分離が知覚される.これは,テクスチャを複数枚提示することによってなんらかの信号が加算されていることを意味している.この加算されている信号の正体には,輝度コントラスト,方位,局所的方位差,初期的境界線などが候補としてあげられるが,実験の結果,境界線の信号が加算されていることが示された.またその加算の様子を詳細に調べたところ,輝度の違いによる境界線と極めて類似した様式が見られた.このことは,境界線を定義している特徴に依らない,普遍的な境界線の表象がごく初期的な視覚情報処理の段階で存在していることを示唆している.一般的に,方位差の検出は輝度差の検出と異なり,より多くの計算が必要なことが知られており,そこには非線形的な処理が含まれていると考えられる.にも関わらず方位差による境界線の処理に線形的な加算に近い現象が認められたことは,大きな意味を持っている. 昨年度までの研究から,運動視においても刺激を定義する特徴が何であるかに依らない処理があることが示されており,このこともふまえると初期視覚情報処理全体を統一的な理論で説明することができるという可能性が示唆されたと言える.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Harasawa, M., Sato, T.: "The critical factor for performance improvement in multi-frame orientation texture segregation."Vision ScienceS Society Second Annual Meeting. 173 (2003)
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[Publications] 原澤賢充: "適応的心理物理学的測定法による閾値の推定"VISION. 15(3). 189-195 (2003)
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[Publications] 原澤賢充, 佐藤隆夫: "テクスチャ刺激の連続提示による境界線検出の促進の時間特性"日本心理学会第67回大会発表論文集. 569 (2003)