2003 Fiscal Year Annual Research Report
地球環境レジームの有効性に関する比較分析:有効なレジームデザインを求めて
Project/Area Number |
01J05008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阪口 功 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地球環境 / レジーム / 有効性 / 制度 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き、オゾン層保護レジーム、ワシントン条約レジーム、捕鯨に関するIWCレジーム、長距離越境大気汚染条約レジーム、海洋汚染に関するMARPOL条約レジーム、生物多様性条約レジーム、地球温暖化防止レジームなどに関するデータの収集、更新を行うとともに、各レジームの比較分析を行った。また、最近発表された欧米の研究者の研究成果もカバーし理論構築に役立てた。 本年度の研究により得られた新たな知見は次の通りである。第一に、地球環境レジームの有効性は一般にゲームの構造により左右されること。特に(ゲーム論で言う)繰り返しゲームの反復の程度は有効性にプラスの影響を与える。第二に、NGOの参加は一般にレジームの有効性に寄与すると言われているが、必ずしもそうはならないことが明らかになった。NGOがレジームの有効性に貢献するには、NGOの活動原理と規範がレジームの原理や規範と一致している必要がある。環境NGOの中には各環境レジームの原理や規範を共有していないものも多数あり、そういったNGOの参加が高まるとレジームの有効性は長期的には低下していく。第三に、生息地や生態系の保護に関係するレジームでは、地域のニーズとの整合性が重要となる。つまり、レジームで導入される規制措置がその生息地や生態系に依存して生活する地域住民のニーズに対応している場合は有効性が高まるが、ニーズを無視している場合は有効性は大きく低下する。第四に、レジームの有効性は政策決定者が規範をどの程度学習するかにより左右される。この点に置いて、最初から実施が困難な高いレベルの規制措置を導入し国家間の対立を激化させるよりも、緩やかな規制措置から徐々に規制のレベルを上げていく方が政策決定者が規範を学習する可能性が高い。
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