2002 Fiscal Year Annual Research Report
有質量2A理論に基づいた「M理論の拡張」及び「ブレイン電荷の分類理論の一般化」
Project/Area Number |
01J05035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 健 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 素粒子理論 / 超弦理論 / ブレイン |
Research Abstract |
素粒子の統一理論の候補である(10次元の)超弦理論に現れる「ブレイン」という板状のものの動力学的性質、特に二体の崩壊過程について研究を行い、プランク長以下のスケールに関してブレインの幾何学的な形状の時間的振る舞いを明らかにした。具体的な議論は以下の通りである。 「ブレイン」は、超弦理論で切望されている非摂動的定式化をはじめ、種々の重要な役割を果たすと考えられており、その性質の解明は急務である。ブレインは電荷を持ち、対消滅が可能なため、その配位の分類は通常のベクトル束での分類を一般化した「K理論」によってなされる。しかしこの枠組みでは対消滅以外の、角度を持った交差等の一般の崩壊を扱うことは出来ず、また動的な振る舞いの情報を得ることができない。このような種類の崩壊は、10次元2A理諭等から素粒子の標準理論や宇宙諭を導く際に起こるとされ、その幾何学的性質は物理的観測量に結び付くため、その動的な振る舞いの解析が重要となる。本研究では対消滅より一般的な崩壊として、1つの角度をもつねじれの位置にあるブレインの二体の崩壊を取り上げ、崩壊初期の情報が後の物理を左右する重要な要素になりうると考え、初めて(短距離有効理論である)超対称ヤンミルズ理論の側から動的性質を解析した。結果は、崩壊後には幾何学的には交差面に対して双曲線状になり、時間的な振る舞いとしては「底」の部分が指数関数的に加速しながら崩壊すること、また典型的には弦の特徴的スケールまで離れるのに(プランク時間単位で)角度の2倍の平方根程度かかるということを示した。また、長距離側からなされた超重力理論や有効ポテンシヤルによるアプローチの結果と比較し、無矛盾性を議論した。ただし議論は二体の距離がプランク長以下の場合に限った。解析では、崩壊を引き起こす種(出発点)となる量子揺らぎの評価が重要になるがこれを各モードごとに評価し、その時間発展をWKB近似で追い、その後平均化して期待値をとり、これを凝集した古典場と見なして対角化し、幾何学的情報を取り出すという手法をとった。超対称ヤンミルズ理論を用いることにより、初期の揺らぎとその時間発展が適切に評価できて時間変化する幾何学情報を引き出せると気づいたところが特色、新しい点である。
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