2002 Fiscal Year Annual Research Report
凝縮相および生体内における電子・水素移動の協同現象に対する理論的研究
Project/Area Number |
01J05042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
重田 育照 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水素移動反応 / 電子・プロトン共同系 / 共同効果 |
Research Abstract |
多重プロトン-電子移動反応は生命機能において最も基本的で重要な反応の一つである。例えば、DNA中では塩基対間のプロトン移動(PT)反応は塩基対間の電子移動(ET)だけでなくやらせん軸方向のETと結合している。今までの水素移動反応の動力学的研究はプロトンの運動を古典的に取り扱うものが殆どであるが、プロトンと電子を量子力学的に取り扱う方法も極めて限られた系に対して適用されている。Fangらは、1つの水素移動サイト内のプロトン-電子移動(PET)における溶媒モードの効果を、1次元モデル系を用いて解析し、逐次移動機構や同時移動機構を明らかにした。しかし、多重反応では1サイトの水素移動反応にはない協同効果が問題となってくるなど、より複雑な反応機構が予想される。 本研究ではFangらの研究とは異なり、溶媒モードではなく、分子内運動と結合した1次元モデル系でのPET反応機構を調べ、さらに、多重水素移動反応へと展開した。分子内運動をプロトンドナーとアクセプター上の有効電荷の時間依存変化としてモデル化し、反応機構を量子ダイナミクスを用いて解析する。まず、1サイトのPET反応機構を電子とプロトンに対するポテンシャル面の時間変化を推定した。特に、初期電荷と電荷揺らぎの大きさの関係に着目し、その符号(正・負)の組み合わせ。例として、D、Aの電荷が両方とも正の場合を解析した。初期時刻ではD-A間のETが主であるのに対し、非断熱遷移が起こると電子とプロトンの同時移動が主となり、電子がA上にいてPTが起こる反応経路も存在することを明らかにした。2重水素移動に対するモデルとしては、1サイトモデルを拡張し、互変異性よって誘起される電荷揺らぎと結合する2本の1次元電子-プロトン系を取り上げる。特に、カルボン酸2量体のモデルに対しては、2つの電荷揺らぎが同期している場合とそうでない場合の2重水素移動反応機構(同時反応・逐次反応)の違いやモード間カップリングの有無による形状依存性を調べた。やはり、2量体のように環状の分子では同時移動が起こる場合があるが、線形の場合は2つのプロトンが独立に移動する反応が起こりやすいことが判明した。
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Research Products
(1 results)