2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J05046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 加奈子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 擬似液体層 / 表面隔解 / 結晶成長 |
Research Abstract |
本年度は、雪結晶の角に存在する擬似液体の温度依存性について詳しく調べた。雪結晶の六角プリズムの形を、3次元的に見ると、3種類の角があることがわかる。一つは、プリズム面とプリズム面が接して120度角を作っている稜線A、二つめは、プリズム面と底面が接して90度の角を作っている稜線B、そして最後の一つは、2つのプリズム面と底面が一点で接して作られる頂角Cである。これら3種の角が少し荒れて曲率を持ったとき、その表面エネルギーは各々異なる為に、その温度依存性は異なるはずである。何故なら、擬似液体層には、表面エネルギーの高い表面ほど、低い温度まで存在するという性質があるためである。 具体的には、氷の結晶構造から、注目する表面の単位表面積あたりに分子の結合の切れた数から、簡単化した表面エネルギーのモデルをつくった。次に体積一定で、水蒸気からの相転移がないと過程して、エネルギーを最小にする形を計算した。そして、0度から-30度の温度領域で形の変化を見た。ここで、擬似液体が一分子層から0.2分子層(現実には層として消滅している)温度領域では、結晶表面には水分子がばらばらに吸着している状態とみなし、荒れて高い表面エネルギーが実現していると仮定した。その結果、頂角C、陵線A、稜線Bが異なる温度依存性を持つことを明らかにした。これにより温度によって角の擬似液体のある位置や層の厚み変化することがわかり、私のこれまでの研究とあわせると雪のダイアグラムの統一的理解、特に水飽和水蒸気より高い蒸気圧での雪の多様性に富んだ形の理解につながると考える。 また、シミュレーションへ向けての準備として、雪結晶の樹状の成長の実験を行い、顕微鏡によるその観察も行った。水蒸気の対流が少ない条件では、主枝がまず長くのぴ、その後にゆっくりと二次枝がのびる特徴が観察された。
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