2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における農本主義(農本思想)の歴史社会学的再構成:その現代的意義への着目
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01J05070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舩戸 修一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 農本思想(農本主義) / 農民文学 / 土の芸術 / 地域特産品 / 生活資源 |
Research Abstract |
平成15年度の研究実績は、(1)近代日本における「農本思想(農本主義)」に関する研究、(2)現代における「農本思想」運動-農的価値や生活を基礎にした地域づくり-に関する研究、に集約される。 (1)について。具体的には、犬田卯の農本思想を検討した。そもそも犬田卯は専ら「農民文学者」として扱われてきており、これまでの先行研究ではほとんど論じられてこなかった。それゆえ、農本思想家(農本主義者)としての犬田の歴史像は、明らかになったとは言い難い。そこで犬田が構想した「土の芸術」論に注目し、そこから犬田の農本思想を明らかにした。この「土の芸術」論は、大正中期から隆盛しつつあった「農民文学」が都市民から記述され、実際の農村や農民を描いたものでないことに犬田が反発したことから生まれたものであった。犬田は、この「土の芸術」こそ、農民自身が農民自らを記述する文学であると措定する。これは農民が現在置かれている状況-例えば、封建遺制である地主-小作関係から生じる軋轢や農村社会に急激に浸透する資本主義から生じる貧富の差など-を記述していく文学を意味した。よって「土の芸術」論とは、農民の「自己表現の手段」として考えられていたのである。また犬田は、このような独自の芸術論を打ち立てることにより、農民の「自己覚醒」を企図していた。こうして「土の芸術」論は、当時、封建遺制と資本主義の荒波の中で翻弄される農村社会を変革し、そこに拘束された農民自身を解放していく有効な手段として構想されていたのであった。以上の研究成果は「農民文学者とその社会構想-農民文学者・犬田卯の農本思想-」という題目で、日本村落研究学会編『村落社会研究』(第20号)に掲載されている。 (2)について。具体的には、熊本県南小国町の「特産品作り(味噌作り)」を調査した。これまでの先行研究では、特産品作りのモチベーションは経済的利益という観点のみで説明されてきた。ところが、調査の結果、この地域で「味噌作り」に励む住民には、味噌を、経済的利益を生む「商品」としてだけではなく、自らの生活に深く関わってきた「生活資源」として捉えるまなざしがあり、これが生産のモチベーションになっていることが明らかになった。以上の研究成果は「生活資源を活用した地域特産品-熊本県南小国町の味噌作りの事例から-」という題目で、地域社会学会編『地域社会学会年報』第16集(2004年)に掲載されている。
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Research Products
(2 results)