2002 Fiscal Year Annual Research Report
脳脊髄液接触ニューロンにおける光情報と時間情報の統合メカニズム
Project/Area Number |
01J05084
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 恭高 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 脳脊髄液接触ニューロン / 桿体 / 錘体 / 網膜 / 松果体 / ロドプシンキナーゼ / ロドプシン / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
本研究では研究計画調書に記載した研究計画に従い、光受容体キナーゼの分子解析を行った。 脊椎動物の二種類の視細胞(桿体と錐体)は、各々の生理的役割に応じて異なる光応答特性を示すが、これは光情報の伝達・遮断に関わる蛋白質の違いに起因すると考えられる。脳脊髄液接触ニューロンには、桿体型・錐体型サブタイプの混成からなる一群の光情報伝達蛋白質が発現しており、視細胞に類似した光応答性を示すと推測できる。そこで、視細胞の光応答特性を規定する分子基盤の理解を通して、脳脊髄液接触ニューロンの光応答性を推定できると考え、光受容蛋白質の不活性化を司るキナーゼの解析に着手した。ゼブラフィッシュのGRK1(桿体型)とGRK7(錐体型)のcDNAを単離したところ、それぞれ2種類のサブタイプが存在することを見出した(それぞれGRK1a・1b, GRK7a・7bと略)。眼球におけるGRK1aと1bの発現量をmRNAレベルにおいて比較したところ、GRK1bは1aに比べて5.4倍多く発現していることが明らかになった。同様に、GRK7aと7bを比較したところ、7bは7aに比べて7.8倍多く発現していた。さらに脳内光受容器官である松果体についてそれぞれの発現量を比較したところ、興味深いことに、GRK1、GRK7共に眼球の場合とは逆の結果を得た。すなわち、松果体においてはGRK1aが1bよりも多く発現しており、またGRK7aは7bよりも発現量が少ないという結果を得た。これらの結果は、GRK1aと1b、またGRK7aと7bはそれぞれ組織特異的な発現調節を受けていることを示している。さらにこれら4種類のキナーゼは、それぞれ異なった生理機能を担う可能性も考えられる。今後、これらのキナーゼの発現細胞や活性に関する詳細な解析を通して、視細胞や脳内光受容細胞の光応答特性の分子基盤に迫ることができると考えている。
|