2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J05086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 雅浩 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授
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Keywords | 大気海洋相互作用 / 線型大気モデル / 中立モード |
Research Abstract |
今年度、研究代表者は課題「数十年規模の気候変動の予測可能性」のもとに数年〜十年スケールの気候変動のメカニズム理解に関する研究を行ってきた。昨年度までの研究では、特に中緯度大気海洋系の変動に注目し、海面での熱フラックスを介した大気海洋間の相互作用の実態を解明することに成功した(この研究に対して日本気象学会より論文賞が贈呈された)。そこでの重要な知見に、長期気候変動の時間スケールは海洋などのゆっくり変化する媒体が担っているが、変動の構造は時間スケールにあまりよらず、大気内部の力学で決定されるらしい、ということがある。これは、長期気候変動の予測を試みるためには、大気自身の「とりやすい」変動パターンの力学と、それを効率的に励起する強制源の特定が必要であることを意味している。そこで、今年度は大気変動の起源に関して、「中立モード」というキーワードを軸に、線型大気モデルを作成・改良して数値計算を行った。中立モードとは、力学大気に内在するモード(大域解)のうち、最も存在時間の長いゆっくり変化するものを指し、それが現実に観測される大気変動の卓越するパターンと似ていれば、その大気変動の起源・力学の詳細が解明できると期待される。今年度の研究では、中緯度だけでなく熱帯大気の「とりやすい」変動パターンにも対象を広げ、線型大気モデルの計算から得られた中立モードが、実際に大気変動の卓越分布とよく似た構造をもつことを明らかにした。これにより、大気長周期変動の力学的理解はすすんだが、それを励起する強制源については完全に特定できておらず、今後の課題として残る。また、今年度の研究の副産物として、乾燥大気だけでなく、水蒸気の凝結過程を含む湿潤大気に適用できるような新しい線型モデルのスキームを開発した。このモデルは、さらに拡張を行うことで、中緯度のジェットの変動・ストームトラック(高低気圧活動)の変調・海面からの潜熱供給の変化、という中緯度大気海洋系の相互作用に起源をもつようなモードの存在をつきとめるのに有効であると考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Watanabe, M., F.-F.Jin, M.Kimoto: "Tropical Axisymmetric Mode of Variability in the Atmospheric Circulation : Dynamics as a Neutral Mode"Journal of Climate. 15. 1537-1554 (2002)
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[Publications] Watanabe, M., F.-F.Jin: "Role of Indian Ocean Warming in the Development of the Philippine Sea Anticyclone during El Nino"Geophysical Research Letters. 29. 10.1029/2001 GL014318(DOI) (2002)
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[Publications] Watanabe, M., F.-F.Jin: "A Moist Linear Baroclinic Model : Coupled Dynamical-Convective Response to El Nino"Journal of Climate. 16(印刷中). (2003)
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[Publications] 渡部雅浩: "北大西洋における大気海洋系の熱的結合と相互作用-2001年度山本・正野論文賞記念講演-"天気. 49. 819-832 (2002)