2003 Fiscal Year Annual Research Report
現在進行形の島弧・大陸衝突帯における広域変成帯上昇のテクトニクス
Project/Area Number |
01J05232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真砂 英樹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地震発生 / プレート境界断層 / 流体 |
Research Abstract |
台湾中央山脈に産する変成岩帯中において,かつてのデコルマ(プレート境界断層)と考えられる断層を発見した.断層の直下には多数の鉱物脈が見られた.この断層は1999年に起こった集集地震の震源の深さに相当する条件下から上昇したものであり,よってこれらの鉱物脈は地震に深い関わりを持った流体の痕跡であると考えられる.このような観点から,現地研究者の協力のもとこれらの鉱物脈の記載・解析を行った. 脈は方解石を主体とする脈と石英を主体とする脈に大別され,後者は更にほぼ石英のみからなる脈と長石(斜長石,カリ長石)を含む脈とに分類できる.静岡大学理学部の蛍光X線面分析装置を用いた解析の結果,これらの脈の複雑な交差関係が明らかとなった.このことは,これらの脈がほぼ同時期に形成されたことを物語っていると考えられる.鏡下観察及び,二次電子像(SEM)による観察によって,石英質脈中にルチル,ジルコン,燐灰石などのHFS元素濃集相の存在が認められた.HFS元素は低温の水には難溶で,故にこの脈の起源流体が高温であったことを示すものである.母岩の変成度が下部緑色片岩相程度であることを考えると,これらの流体はそれよりもはるかに高温である.おそらくは地殻のより深部に由来し,断層直下に滞留していたものと考えることができる.このような流体の濃集は間隙水圧の上昇を招き、以て岩石の破壊強度を低下せしめる. 同様の視点から、九州四万十帯中に分布する延岡断層周辺においても同様の解析を行った.その結果,本断層においては断層の下盤側に脆性破壊が集中し多数の鉱物脈が認められた.流体包有物から求められた流体の温度圧力条件は,やはり母岩のそれを上回っており,台湾において見出された深部由来の流体の濃集がここでも認められた. 本研究の成果は来年度初めに行われる地球惑星関連科学合同大会で発表される他,論文として公表する準備を目下進めている.
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