2003 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における児童文化に関する社会学的・メディア論的考察
Project/Area Number |
01J05251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瓜生 吉則 東京大学, 社会情報研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | メディア論 / 系譜学 / マンガ・劇画 / 児童文化 |
Research Abstract |
大阪府立国際児童文学館をはじめとする資料収蔵施設において、近代日本における児童文化に関する資料、特に1920年代後半の「プロレタリア児童文化」に関して、雑誌『童話研究』および『童話の社会』を集中的に閲覧・収集した。それによって、従来のイデオロギー的な研究からは抜け落ちがちであった、「少年読者」の組織化のための言説戦略を検討し、昨年度までに資料を収集してきた「大衆的児童文化」および「芸術的児童文化」との共通平面上で戦前期の児童文化を比較検討する知見を得るに到った。 また、3年間の特別研究員としての研究のひとつの成果として、吉見俊哉/花田達朗を編者とした共著『社会情報学ハンドブック』に論文「マンガ文化」を発表した。マンガは、今や子どもの娯楽的な読物としてだけではなく、50代以上の大人も日常的に楽しみ、さらには海外からも注目を集めている「日本の大衆文化」の代表的な表現・メディアとなっている。2001年の日本マンガ学会設立を契機にして、マンガはますますその学術的な検討が必要とされているが、研究視角についてはまだ統一的な見解が得られていない。本論文では、独自の「表現」特性を持ちながら、従来の「芸術作品」のように美術館などに陳列されるのではなく、定期刊行物としての雑誌媒体を通じて受容/消費される「商品」としての特性を多分に含んだマンガを<文化>としてとらえるために、社会学やメディア論のみならず、経済学、美学、文学、教育学などの隣接分野の成果を積極的に取り入れること、および同時に「文化」という概念を捉え返す機会とすることを提唱した。
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Research Products
(1 results)